「一時的円安」のシナリオ

米ドル/円は1月にかけて130円を大きく割り込む中で、それまでの上昇トレンドをサポートしてきた120日MA(移動平均線)を大きく割り込んだ(図表1参照)。それまでの上昇トレンドにおいて起きていなかった現象が起こったということは、トレンド自体が下落へ転換した可能性が高いだろう。

【図表1】米ドル/円と120日MA(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル/円のトレンドは、過去の経験を前提にすると、短い場合でも1~2年、長い場合は4~5年も続く。そうであれば、最近にかけての米ドル/円の上昇は、あくまで2022年10月から始まり、いまだ半年も過ぎない下落トレンドが展開する中で、それと逆行した一時的動きの可能性が高いということになるだろう。

要するに、2022年10月の米ドル高値である151円の更新に向かうほどの動きではない可能性が高いだろう。以上のことから、この先については、「一時的な米ドル高・円安」とは、どんなシナリオになるのかについて考える必要がありそうだ。

2000年以降の代表的な米ドル/円の下落トレンドを見ると、それと逆行した一時的な上昇は120日MAを大きく超えない程度にとどまっていた(図表2参照)。そんな120日MAは、足元で138円台。その意味では、一時的な米ドル/円上昇なら、せいぜい138円程度までといった見通しが基本になりそうだ。

【図表2】米ドル/円と120日MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ただし、細かく見ると、米ドル/円の下落トレンドでも、それと逆行する反発局面で120日MAを少し上回ることもあった。この「少し」は、最大で5%程度で(図表3参照)、138円を米ドルが5%上回るなら144円程度といった計算になる。以上のように見ていくと、あくまで一時的な米ドル高・円安でも、それが目一杯展開した場合は140円を越える可能性もありそうだ。

【図表3】米ドル/円の120日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ところで、トレンドと逆行した一時的な米ドル高・円安の場合、それが120日MAを上回る程度は最大でも5%程度と限りがあるとともに、上回る期間も基本的には最長で1ヶ月以内といった具合に限度があったようだ。

それを参考にすると、仮に「一時的な米ドル高・円安」だとしたら、140円を越える等どこまで続くかとは別に、あくまで「一時的な米ドル高・円安」なので、120日MAとの関係などから、長くても1ヶ月程度で120日MA以下の米ドル安・円高に戻す可能性があることも、頭に入れておく必要があるのではないか。