好決算が目立つ電炉企業、「環境に優しい」が今後のキーワードに

電炉株に対する注目度が高まっている。中部鋼鈑(5461)、合同製鉄(5410)などの電炉企業の好決算が目立っていることが要因である。短期的な業績だけではなく、中長期的にも環境に比較的優しい電炉企業が注目される可能性が高まっている。

鉄を作る方法には「高炉」と「電炉」がある。高炉は鉄鉱石から鉄を作る設備だ。巨大な設備が必要なことで高炉と呼ばれる。鉄鉱石を原料とする高炉は、石炭から作られるコークスを還元剤(酸素の除去剤)や熱源として使うために、大量のCO2を発生する。鉄鋼業のCO2排出量のうち、9割以上が高炉メーカーによるものである。

電炉は「電気炉」の略で、原料となる鉄スクラップをアーク放電(狭い通路に電流を集中させることで起こる放電)によって発生する放電熱で溶かし、酸素や窒素などの不純物を取り除いて製鋼する手法。電炉での製鋼方法は、鉄鉱石や石炭、石灰石を使う電炉に比べ、銑鉄工程がないこともあり、CO2発生が少ないことがメリットとして知られる。

今後、日本や中国で電炉比率が高まる見通し 

2021年の主要国の電炉比率の状況(日本鉄源協会など)を見ると、北米では粗鋼生産のうち電炉比率が68.9%で、高炉比率は31.1%と電炉の比率が高く、欧州では高炉51.6%、電炉48.4%と拮抗している。

これに対して、日本は高炉が74.4%で、電炉は25.6%。さらに中国では高炉が89.4%で、電炉はわずかに10.6%に過ぎない。そのため、今後、特に日本や中国で電炉比率が高まってくることが予想される。

短期的に電炉企業の業績が好調な要因は、原料である鉄スクラップ価格が下落する一方で、販売価格が高めになっていることが主因だろう。価格の差(スプレッド)が利益になる構造である。

中長期的には、これまで見てきたように環境負荷の少ない電炉の市場拡大が期待される。鉄スクラップは地産地消することで、運搬コストなども削減できる。そこで今回は環境にも配慮し、今後の市場拡大が期待される電炉株関連の銘柄をピックアップしてみた。

東京製鐵(5423)

電炉鉄鋼メーカー大手。独立系で業界首位級の実績を誇る。建材が主力事業で、機動的な価格政策に特徴がある。

2022年10月、トヨタのサーキット競技車両に、同社の鉄スクラップ由来の鋼材が採用されたと発表。電炉で製造した鋼板がレース車両に使われたことはこれまでに例がない。サスペンション構成部品に搭載されているが、これはCO2発生が少ない点が特徴である。レース用としても品質が認知されれば、今後、一般自動車向けにも普及する可能性がある。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月16日時点)

大和工業(5444)

電炉大手であり、H形鋼に強みがある。H形鋼はその名の通り断面がH形で、建築や橋梁などの構造材や高速道路の基礎杭などに使われる。海外展開の先駆けで、1987年に米国に進出。その後は、タイ、韓国、バーレーン、サウジアラビア、ベトナムなどに進出している。特に米国では老朽インフラの更新が急がれていることで、米国事業の貢献が見込まれる。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月16日時点)

共英製鋼(5440)

関西の電炉大手。鉄筋コンクリートに使われる棒鋼で国内シェアトップ。海外はベトナム、米国、カナダで事業を展開している。電炉の熱を活用した環境リサイクル事業も展開。30年以上前に、産業廃棄物や医療系廃棄物を完全無害化・リサイクルする技術を独自に開発している。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月16日時点)

合同製鐵(5410)

日本製鉄系の大手電炉メーカー。鉄筋用棒鋼や線材など建設用の比重が大きい。2023年3月期の業績予想を2月2日に上方修正。営業利益は前回予想を50億円上回る125億円(前期は約27億円の赤字)になる見通しだ。また、期末配当は前回予想比70円増配の140円(年190円配当)になる見通し。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年2月16日時点)

その他、中山製鋼所(5408)、大阪製鐵(5449)、トピー工業(7231)、東京鐵鋼(5445)といった注目銘柄もある。

※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。