円安阻止介入における通貨当局の基本戦略

財務省は2月7日、2022年10~12月期の為替介入を公表した。これにより、2022年10月にかけて展開した米ドル高・円安局面において、日本の通貨当局が米ドル売り・円買い介入に出動したのは、9月22日、10月21日、同24日の3回だったことが明らかになった(図表参照)。ここから浮かんでくるのは、米ドル高・円安阻止において日本の通貨当局の戦略では、145円、150円という大台が目標とされた可能性だ。

【図表】米ドル/円の日足チャートと為替介入(2022年9~11月)
出所:マネックストレーダーFX

今回、最初の為替介入となったのは9月22日だった。この日は、米ドル高・円安が145円を大きく超えてきたタイミングだった。それまでも円安けん制を繰り返してきた通貨当局だったが、145円という区切りのいい水準を目標に、2011年以来10年以上ぶりに実際の米ドル売り・円買い介入に出動したと考えられる。

この介入により、一旦米ドルは145円近辺で上値の重い展開が続いた。しかし、10月に入ると145円を大きく超えて、じわじわと米ドル高・円安が広がり出した。こうした中で、マーケットでは何度か米ドル売り・円買い介入の噂が流れる局面があった。しかし、今回財務省の公表によると、実際には介入は行われていなかった。

2度目の介入が行われたのは10月21日だった。この日は、米ドル高・円安がいよいよ150円の大台も大きく超える動きとなったタイミングだった。財務省の公表によると、この日の介入額は5兆6000億円で、1回目の介入額(2兆8000億円)のほぼ倍に上っていた。

この介入により、米ドルは150円を大きく割り込むところとなった。ただ、週をまたいだ翌営業日の24日、米ドルは再び150円に迫るまで上昇した。財務省の公表によると、このタイミングで3度目の米ドル売り・円買い介入が行われていた。以上のように見ると、この当時の通貨当局は150円を目標において、円安阻止介入に動いていた可能性が高そうだ。

その後、11月に入ると、米国のインフレ率が顕著に低下し、米金利も低下傾向となる中で、米ドル/円もそれまでから一変し、大きく下落に向かうところとなった。こうした中では、円安阻止介入の必要性はなくなったため、結果的に今回の円安阻止の為替介入は計3回の出動で終了となったわけだ。

それにしても、今回の財務省の公表から浮かんでくるのは、米インフレ局面における米金利上昇の中で難しい米ドル高・円安の阻止ながら、145円、150円といった区切りのいい水準を目標として大規模介入に出動し、米金利が低下に転じ、米ドル安・円高へ流れが変わるのを待つということ。それが、当時の通貨当局の基本戦略だったのではないだろうか。