米ドル「下がり過ぎ」の反動

米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は、一時127円台まで米ドル安・円高となったところでマイナス10%近くに拡大した(図表1参照)。経験的には、これは短期的な米ドルの「下がり過ぎ」、米ドル安・円高の「行き過ぎ」懸念がかなり強くなったことを示すものだった。

【図表1】米ドル/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

2000年以降で、同かい離率が今回のようにマイナス10%前後まで拡大したのは2002年7月、2008年に3回など主に4回あった。その中で一部の例外を除くと、基本的に米ドルは短期的な「下がり過ぎ」一巡で、当面の底打ちとなっていた。

また、これらのケースの多くは、米ドルが当面の底を打った後は、「下がり過ぎ」の反動から比較的大きく反発に向かった(図表2参照)。多くの場合は、90日MAを5%前後上回るまでの米ドルの反発が起こっていた。その上で、米ドルが改めて底値を更新するまでには半年から1年以上もの時間を要していた。

【図表2】米ドル/円の推移(2000年~2009年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上、最近の状況と類似した過去のケースを参考にすると、米ドル安・円高は短期的に「行き過ぎ」懸念が強くなっていた。そのため、さらなる米ドル安・円高には限度があり、きっかけ次第では行き過ぎの反動から米ドル高・円安に大きく戻す可能性があったと言えるだろう。そうした中で、雇用統計サプライズ、日銀人事思惑などの「きっかけ」が相次いだことが、米ドル高・円安が再燃した背景ではないか。

ただし、過去の類似ケースを参考にすると、この動きには「続編」がありそうだ。その1つは、「下がり過ぎ」の反動で、米ドルは90日MAを5%前後上回るまで上昇する可能性があるということ。足元の米ドル/円の90日MAは138円で、この先当面135円方向へ下落することが見込まれる。したがって、90日MAを5%前後上回るなら、140円程度までの米ドル反発が見込まれることになりそうだ。

「続編」のもう1つのポイントは、やがて米ドル/円の下落が再燃しても、これまでのところの米ドル安値である1月16日に記録した127.2円程度を更新するまでに半年から1年以上の時間を要することになりそうだということ。つまり、127.2円の米ドル安値更新は、早くても夏以降、場合によっては2024年以降になる可能性がある。

以上の見通しからすると、あの1月の127円までの米ドル安・円高は「当面における最後の円高」であり、場合によっては「2023年最後の円高」だった可能性もあるかもしれない。