ゼロコロナ政策緩和で上昇トレンドが浮き彫りに

2022年12月末~2023年1月中旬の中国本土市場・香港市場は上昇しています。2022年12月19日終値~2023年1月16日までの騰落率は、上海総合指数が+3.9%、香港ハンセン指数は+12.4%となっています。

上海総合指数、香港ハンセン指数共に、10月末を底として株価は上昇を続け、50日移動平均線、200日移動平均線を株価が上抜けて推移しており、上昇トレンドがはっきりしてきたところです。

2023年の旧正月は1月22日で、中国本土市場は1月23~27日、香港市場は1月23日 ~ 25日が、それぞれ休場となります。かなり急激に上昇してきただけに、旧正月前に一旦利食い売りが入って調整があるかもしれません。

とはいえ、両指数共に200日移動平均線を50日移動平均線が上に突き抜けるゴールデンクロス(テクニカル的な中長期上昇サイン)が出来そうになってきているところで、旧正月前の調整があったとしても、その後は堅調な株価推移が期待できるのではないかと思います。

ここまで株価が強い推移となっている原因は3つあります。1つは中国当局がゼロコロナ政策を止めたことで、経済再開への期待感がもたれていることです。中国の経済再開への期待感を受けて、中国株だけでなく、鉄鋼や銅、金などの金属も上昇基調となってきています。

1月17日に発表予定の中国の10-12月期のGDP成長率は7-9月期の3.9%増に対して、市場予想は1.6%増とさらに減速する見込みです。これはゼロコロナ政策を止めたことによって、感染者数が拡大したことによる影響が大きいと思います。

中国では新規感染者数などのデータが発表されなくなりましたので、実態はわかりません。しかし、いずれ時間の問題で集団免疫が獲得できるのであれば、新型コロナウイルスの問題は落ち着き、そう遠くない時点で経済再開の効果が大きく出てくる可能性が高いでしょう。

不動産セクターとITセクターへの監視の緩和も大きな株価上昇の材料に

残りの2つの原因ですが、2023年に入って大きなニュースが2つありました。1つは中国当局が一部の不動産会社による借り入れ拡大を認め、借入額の上限を緩和するとの報道があったことです。

元々、不動産企業が苦境に陥った要因は、不動産企業に対して、2020年8月に3つのレッドラインと呼ばれる「三条紅線」という金融規制の方針が出たためです。

3つのレッドラインとは、(1)資産負債比率70%以下、(2)自己資本に対する負債比率100%以下、(3)現金保有額が短期債務よりも大きいという3つの基準で、3つの基準の達成具合で年間の有利子負債の増加額を定めたものです。

これにより破綻する不動産企業や開発途上のプロジェクトが停止してしまうような事態が起こり、中国の不動産市場の悪化や不動産セクターの株価の大幅下落などが発生しましたが、今回の発表は「三条紅線」政策を大きな転換点になるのではないかと思います。

もう1つは銀行保険監督管理委員会(CBIRC)の郭樹清委員長が、国営メディアに複数のIT企業の金融業に関する調査を中国当局が終えたと述べたことです。これは長らく続いていた、中国の大手IT企業への規制強化の完了を示唆するものと思います。

その後、中国当局から厳しい監視をされていた中国配車サービス大手の滴滴グローバル(米国上場:DIDI)が配車サービスの新規ユーザー登録について、中国当局から承認を得たと発表するなど、規制強化が終わったことが伝わってくるニュースが出てきています。

これらのニュースを受けて、規制を受けていたIT大手企業の株価は大きく上昇しており、アリババ・グループ・ホールディング(09988)とテンセント(00700)の2022年12月19日終値~2023年1月16日までの騰落率は+30.3%と+21.7%に達しています。

さらにテンセントは自社株買いも継続している様子で、長らく下落が続いてきただけに、まだ株価が割安と判断しているのかもしれません。2023年は先進国では金融引き締めが続く中で、株価は軟調に推移する可能性もあるところですが、中国株は2021年から2022年まで大幅な下落を続けてきただけに、2023年は反動の年となる可能性があると思います。