2022年4月の高校学習指導要領改訂により、金融経済教育の内容が拡充されました。そこでマネックス証券の投資教育部門であるマネックス・ユニバーシティでは、現役の中学生、高校生の皆さんから、お金にまつわる素朴な疑問・質問を募集し、それに答えることで、お金のことをわかりやすく解説する『世界を知る大人になるための本気の「お金」授業』という連載を2022年12月から開始しました。

マネックス証券が本当に伝えたいお金のこと、世界のこと…、親子で一緒に読んでほしい本音トークを繰り広げます。第1回目は「世界を知るために、金融の勉強は必要ですか?」という質問にマネックス証券ファウンダーの松本大が回答しました。

今回の第2回目は高校3年生・がわちゃんから届いた質問「老後2000万円問題、僕らはいくら貯めれば幸せに暮らせますか?」に、マネックス証券インベストメント・ストラテジーズ兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェローの塚本憲弘が答えます。

テストの成績で10位と20位、本当に幸せなのは…?

「老後2000万円問題」は、2000万円という数字がフォーカスされ、メディアなどでも目にしたかと思いますが、「幸せに暮らすためにはいくら必要か?」という問いに答えるのは、とても難しいことです。なぜなら「幸福」とは自分が決める主観的なものだからです。「幸せ」は人と比較することには意味がありません。自分自身が何に幸せを感じるか?を知ることが大事です。

例えば、あるテストの結果、順位が10位の人と20位の人がいるとします。一見、10位になった人の方が満足度は高そうに思えますよね。でも、1位を目指していたのに10位になった人と、50位を目指していたけれど20位になれた人だとしたら?より幸せを感じるのは、目標より結果が上回った20位の人ではないでしょうか。

同じ学校で隣に座っている幼馴染みでも、価値観は全然違うもの。同じ結果でも目標が違えば幸福度も違ってきます。つまり、まず自分がどんな目標を持つのかが、大事になってくるということですね。では、そのために何が必要でしょうか。私は「自分で働いてみる」ことをおすすめします。可能なら何かアルバイトをして、「お金を稼ぐ」ということを体験してみてください。

私自身も学生時代、ミニコンポ(小型オーディオ機器)がどうしても欲しくて、夏休みに必死でアルバイトをしたことがあります。確か当時でも5万円以上したのですが「これだけ働かないと買えないんだ!」と驚いた記憶が今でも残っています。親から与えられたお小遣いで買うのとは違い、自分で働いて得たお金で買うと「物価」の感覚が身につきます。どのくらい働けば、どのくらいお金が入ってくるのか。その感覚は将来の計画をするうえで必ず助けとなってくれます。

思いもよらないきっかけが未来のヒントに

ところで、先進国アメリカについてよく言われるのは、「実験の繰り返しで成長してきた」ということ。成功している企業は、それ以上の失敗を経験してきている、というのもよく知られています。「失敗を恐れずに、ひとまず、やってみる」というのが、とても大事だということです。

私自身が金融の道に進もうと決めたのは大学生の時ですが、そのきっかけとなったのは実は麻雀でした(笑)。麻雀は成果が見えやすいところが面白く、その延長上に「自分で考え行動し、その結果がパフォーマンスという形で明確に見える」資産運用の仕事に魅力を感じるようになったのです。どんな経験が未来へのヒントになるかはわからないものですね。

実際、金融の世界で働いてみると、夜中にマーケット情報を見ていても全く苦にならないほど楽しく、自分に合った仕事だと実感しています。「これは買いだ」と思ったタイミングと投資対象でリターン(成果)が出れば「正解だったんだな」と満足感を得られ、逆のパターンであっても、結果が見えやすいところに喜びを感じられる。学生時代、ひとまずやっていた麻雀から自分がどんな人間かを知ることができたのです。

お金のシミュレーションよりもっと大事なこと

さて、質問の「老後2000万円問題、いくら貯めれば幸せに暮らせますか?」についてですが、結局のところ将来の夢や計画次第ということになります。でも、夢や目標は変わりやすいものですし、そもそもやりたいことなんて、簡単には見つからないかもしれない。それでいいと思います。あまり長い目で考えすぎず、計画的になりすぎず、早く決めようと焦る必要もありません。

中高生のみなさんには、まだまだたくさんの時間があります。その時間を味方につけて、「ひとまず」気になることをやってみてください。そうやって少しずつ自分のことを知るなかで、好きなことを仕事にできればラッキー。より多くのお金を稼ぐためにはそれだけ自分の時間を失いますが、好きなことなら楽しくて時間を犠牲にしている感覚にはならないでしょう。逆に自分の時間を持てることこそ幸せに感じるかも知れません。

老後のお金については、その延長上に「自分は2000万円あれば大丈夫」とか「1億円あったら幸せになれそうだ」といったように自分自身の「幸せ」の尺度が分かる日がいつかやってくるでしょう。

私はと言うと、ある程度老後に向けて積立は進めつつも、深く意識はしていません。それよりも、夜中もマーケットを見ているのが幸せな毎日。老後のお金を本気で考えるのは、もうしばらく後になりそうです。