5年MAかい離率から考察

一時は1990年以来、約32年ぶりとなる150円を越えるまでの米ドル高・円安となったところから、最近にかけて130円を割れるまで米ドル安・円高に戻してきた。こうした中で、日本経済にとって「悪い円安」とされた為替相場に対する評価はどう変わったかについて、今回は考えてみたい。

まずは、米ドル/円の過去5年平均である5年MA(移動平均線)との関係を見てみよう。2022年10月にかけて150円を越えるまで米ドル高・円安が展開した中で、5年MAかい離率は3割以上に拡大していた(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率(1980年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

1980年以降で、今回のように同かい離率がプラス3割以上に拡大したのは2回しかなかったが、その2回とも同かい離率が3割以上に拡大すると、まもなく米ドル高から米ドル安への転換に向かった。

以上のことから、今回の場合も、2022年後半にかけての「歴史的円安」は、確かに「行き過ぎた円安」の懸念が強かったようだ。そんな米ドル/円が、年明け以降は130円以下の米ドル安・円高に戻してきた。

これを5年MA(移動平均線)かい離率で見ると、一時30%以上に拡大したところから、その後は10%台へ縮小となった。これは経験的には、中長期的な米ドル「上がり過ぎ」は是正されてきたものの、一方でまだ米ドル「上がり過ぎ」圏にあるといった評価は変わらないと考えられる。

90日MAかい離率から考察

次に、米ドル/円を、90日MAかい離率で見てみよう。同かい離率は、足元でマイナス9%以上に拡大した。経験的には、これは短期的な米ドルの「下がり過ぎ」懸念を示すと言えそうだ(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上を整理してみよう。足元で130円を大きく割り込んできた米ドル/円は、主に5年MAとの関係を参考にすると、中長期的にはまだ「行き過ぎた米ドル高・円安是正の途上」にあるようだ。その一方で、短期的には90日MAとの関係で見ると、むしろ「米ドル安・円高の行き過ぎ」懸念が拡大している。中長期と短期の評価が大きく異なり始めていることが、最近にかけての米ドル安・円高を受けた大きな特徴ではないか。