先行き不透明な時代、再びLNGに注目が集まる
ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、LNG(液化天然ガス)が再度注目されている。西側諸国がロシアに対して経済制裁を課す一方で、ロシアが天然ガスの輸出や西側と共同の開発プロジェクトの見直しを示唆し、需給のひっ迫から天然ガス価格が高止まりしていることが背景にある。
LNGは「Liquefied Natural Gas」の略で、メタンを主成分とした天然ガスをマイナス162℃に冷却した液体のことである。油田やガス田から算される天然ガスは「ガス状」だが、これを沸点(マイナス162℃)以下で液化する。
ウクライナ侵攻の長期化によりLNGが見直される傾向も
天然ガスの輸送方法は、気体のままパイプラインを通す方法と液化(LNG化)して運ぶ方法の2つに大別される。パイプラインはコストが低く抑えられるが、輸送距離が限定される。特にロシアからドイツにガスを送る、海底パイプライン「ノルド・ストリーム」が9月に破壊されるなど、安全性に懸念が浮上した面もある。
LNGはプラントなどに多額の初期コストがかかり、ランニングコストも高めだが、長距離輸送に適している。液化することで体積は600分の1に縮小でき、輸送や保管が飛躍的に効率化できる。LNGを常温の海水で温めて気化させ、燃料として活用する。「脱ロシア」を進めるうえでもLNGの需要が高まりつつある。
主要国が太陽光や風力発電など再生可能エネルギーへ傾斜する中で、化石燃料である天然ガスやLNGへの大型投資が減少傾向にあった。しかし、ウクライナ問題の長期化により、LNGが見直されてきている。
EUなど、欧州でのLNG調達拡大は中長期的にも増加する見通しで、新規プロジェクトなど設備投資需要が増加している。島国でパイプラインによる調達ができない日本は、結果としてLNGプラントで日本企業が高い実績を残している。
石油精製プラントなどに比べて、複雑で設計・建設を担える企業は少なく、競合も少ない。ここでは、そのような注目のLNG関連企業をピックアップする。
日揮ホールディングス(1963)
石油、天然ガス系のプラントエンジニアリングで国内首位を誇る。プラントの設計、資材調達、建設までを一括で請け負っているのが強み。中東や東南アジアなど海外案件が大半を占める。LNGプラントでは世界大手の一角で、精油所や石油化学プラントにも展開している。国内の受け入れ基地建設では3分の1以上の設備への参画実績がある。
千代田化工建設(6366)
総合エンジニアリングで国内2位。2021年2月に、カタールの国営石油会社から、LNGプラントの設計、調達、建設業務を受注した。報道によれば、年産能力が計3,200トンの液化処理設備で、2025~2027年の完成を目指すとしている。受注額は1兆数千億円とみられ、日本企業が受注したLNGプラントでは最大級だという。
また、米国の「フリーポートLNGプロジェクト」に参画。米テキサス州のフリーポート近郊にある既設LNGターミナルの既存設備を活用し、年産1,390万トン規模のLNG液化設備を新設。米国で調達した天然ガスを液化し、LNGとして全量を大阪ガスと中部電力が引き取る。米国本土から日本向けに長期契約でのLNG輸出は本プロジェクトが初としている。
明星工業(1976)
熱絶縁工事を得意とする建設工事会社で、専業としては最大手。LNGは超低温で冷却・加圧して液化するため、完璧な保冷施工が求められる。長年培ってきた超低温保冷技術で、液化設備から運搬船、国内の貯蔵設備まで、LNG関連の保冷工事で世界有数の実績がある。運搬に使うLNG船向けにも強みを持っている。
キッツ(6498)
バルブを中心とした流体制御機器・装置の総合メーカー。LNGプラント・LNG受け入れ基地向けの超低温弁(-196℃)の開発と供給実績が豊富。日本のみならず、世界のLNGプラントへのバルブ供給を増やしている。
横河電機(6841)
石油、化学など各種プラント生産設備向け制御システムが主柱。LNGの調達・最適化運用など基幹業務から、LNG基地での運転運用支援、安全管理などを一括してソリューションしている。
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