1年前は0.9%だった2022年末のFFレート見通し
12月FOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利であるFFレート(上限)は4.5%に引き上げられた。ただ1年前、2021年12月FOMCが公表したメンバーの見通しである「ドット・チャート」では、2022年末のFFレート見通しの中心値は0.9%だったので、結果的には1年間で当初の見通しより3%以上もの大幅利上げを余儀なくされたということになるだろう(図表1参照)。それだけ約40年ぶりの本格的なインフレに遭遇した中では、金融政策の判断が難しかったと考えられる。
改めて、過去1年の「ドット・チャート」におけるFFレート見通しを振り返ってみると、大幅な上方修正の連続だったことがよく分かる。1年前、2021年12月のFOMCは、それが開催される半月ほど前に、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が「インフレは一時的との見解を撤回する」と宣言。インフレと戦う姿勢を示し、その直後のタイミングで開かれたものだった。
それでも当時ゼロ金利政策の中で、0~0.25%の誘導目標としていたFFレートは、2022年末には0.9%までの上昇にとどまるとの見通しとなっていた。この時点で2022年中に利上げは終わり、利下げに転じると予想していたとは考えにくいため、この2022年末のFFレートの見通しは、2022年中の利上げピーク予想の可能性が高いだろう。ということは、今から1年前のFOMCは、インフレと戦う中でも、せいぜい1年間で0.25%の利上げを3~4回行うといった見通しだったと考えられる。
しかし、3月に0.25%幅で始まった利上げは、すぐに利上げ幅の上方修正を余儀なくされた。結果的に、「ドット・チャート」の2022年末のFFレート見通しが現実にほぼ追いついたのは、2022年9月の段階だった。
このような米利上げ見通しの上方修正の連続は、記録的に大幅な米ドル高・円安が起こった重要なきっかけになったようだ。2022年10月にかけて150円を越えるまで米ドル高・円安が続いたが、これはドット・チャートが示した2022年末のFFレート水準を先取りした米2年債利回りの上昇でかなり説明可能なものだった(図表2参照)。
2022年12月の「ドット・チャート」が示した2023年末のFFレート見通しは、9月会合の4.6%からさらに上方修正され5.1%となった。皮肉な言い方をするなら、過去1年の大幅な修正を余儀なくされることが連続した事実から、この見通しがどれだけ参考になるか懐疑的なところはある。
ただ、この1年あまり、米金融政策の影響を強く受けてきたことからすると、まだ当分はFFレートの見通しを先取りした米2年債利回りの変動が、米ドル/円にとって重要な手掛かりになる状況は続くのではないか。