価値あるヴィンテージを見抜く審美眼と投資の共通点　ファッションデザイナー・大貫達正さん

マネックス証券が掲げるブランドビジョン「大切なものに投資をしよう」。そこには、投資の価値を儲けや利益だけでなく、それぞれの未来や夢を実現させるものへと進化させていきたいという思いが込められています。ブランドビジョンを通じて、自分自身の美意識や価値観を大切にしながら日々活動する人々の“想い”や“こだわり”を発信しています。

今回は、ジーンズをメインにしたデニムブランド「WESTOVERALLS（ウエストオーバーオールズ）」などを手がけるフリーランスのデザイナーの大貫達正さんの世界観にスポットを当てます。

4歳の頃から「ジーンズ」という言葉がお気に入りで、小学生時代にはお年玉を貯めて高価なヴィンテージジーンズを購入するほど、ファッションに情熱を注いできた大貫さん。18歳になると古着店でアルバイトを始め、やがて古着のバイヤーとなり、ファッションデザインの世界に飛び込みました。

長く伸ばした顎ひげに、お気に入りのジーンズや眼鏡、帽子、アクセサリーなど、こだわりのヴィンテージアイテムを全身にまとった大貫さんのスタイルは一度見たら忘れられないほど個性的です。より良いモノを身に着けていたいという想いが、ハイセンスなヴィンテージグッズの販売やブランド作りの原点になっています。

米国やヨーロッパの古着市などを足繁く訪れ、独自の審美眼で極上のヴィンテージジーンズやジュエリー、家具を買い付けるバイヤーの仕事は、ある意味、モノに投資する投資家的な側面もあると言えるでしょう。

コロナ禍に見舞われた2021年夏からは、地元の茨城県つくば市にギャラリー＆ショップ「SANTASSÉ GALERIE（サンタセッ ギャレリー）」をオープン。遠方からも訪れるお客様1人ひとりに、世界中から集めたヴィンテージ品にまつわるストーリーを丁寧に説明しながら販売することを続けています。

「どんなに裕福な人でも持っていないものを自分は持っている」という自信と「トラディショナルな背景がしっかりあるモノは裏切らないし、値くずれしない」という信念を持つ大貫さん。自分が好きなモノ、大切だと思うモノに関しては一切、妥協せずにこだわり抜く姿勢を貫いています。

大貫さんが時間とお金をかけて選ぶヴィンテージの世界にとって必要なことは、本質を見抜く確かな眼。それは投資の世界でも重要でしょう。個性あふれるヴィンテージファッションの世界を考えたとき、どのような投資の機会が考えられるでしょうか。

ヴィンテージと投資に共通する「目利き力」

「ヴィンテージ」とは、古い時代に丹念に作られた年代物のアイテムのことです。通常の古着とは異なり、時を経ても価値が劣化することなく、むしろ希少性が増すことで需要も増え、価格も上昇する傾向があります。

例えば、米国の老舗アパレルメーカー、リーバイスのシグネチャーデニムとして知られる「501」やスポーツメーカー、ナイキのスニーカー「AIR MAX」などは愛好家が多い人気のヴィンテージアイテムとして現在も高額な値段で取引されています。他にも時計や家具、カメラメーカーなどが手がける工業製品の中にも、長年人々から愛され、希少価値を持つに至った品々が数多くあります。

インターネットの普及に伴い、より専門性や独自性を持ったアイテムの出品や販売に特化したｅコマースサイトも多数登場しています。希少性や趣味性の高い商品のみの売買に特化したネット通販企業などは、ヴィンテージカルチャーの発展や進化に寄与していると言えるでしょう。

この先も色褪せることなく、むしろ価値が上がるような珠玉の逸品を購入することは、投資に通じるものがあるのではないでしょうか。将来の価値を見抜く点に共通する部分があります。モノに対するこだわりや目利き力は投資においても活かせるかもしれません

ヴィンテージへのこだわりが社会にもたらす変化とは

アートやファッションに始まり、日常生活の中で日々使う調度品や生活必需品まで、人々は自分が愛用するモノを通じて、自分の個性を表現したり、審美眼や価値観を育んでいます。良いモノ、愛されるモノ、人々が大切だと感じるモノにこだわるヴィンテージは、今後、社会にどのような変化をもたらすと考えられるでしょうか。

幸せ・豊かさ：

ヴィンテージ品など良質なモノへのこだわりが個性や自分らしさの表現手段となり、幸福度の高い生活につながる。

市場：

自分の好きなモノを探し出す喜びやその過程での人々との出会いが、豊かで温かみのあるマーケットを生み出す。

新しい価値観：

モノが生まれた背景への理解を深めたり、好きなモノを大切に使う習慣が、資源の有効活用や地球環境への意識を高める。

成長・発展：

インターネットによってボーダレスに売買取引されることで、完成度が高く優れたヴィンテージ品に対するニーズが高まり、より大きな付加価値が生まれる。

未来を変える力：

大量消費・大量廃棄を見直し、新たな消費・生活スタイルが構築させる。

ヴィンテージの世界を支える企業

自分の趣味や嗜好に寄り添い、愛着を持って購入している製品を提供している企業の株が上場していないか調べてみるのも、投資を始めるきっかけの1つになるでしょう。

インターネットを通じてヴィンテージ品が世界中で取引されるようになった今、古着や中古カメラ、時計、高級ブランド品、またこだわりの日用品などに特化したネット通販やマーケットプレイスを運営する企業も、投資先の選択肢として考えられるかもしれません。

多国籍の市場をつなぐ越境ECサービスを展開する企業も増えています。日本にいながらにして世界中の個性豊かなマーケットにアクセスできる利便性を提供する企業にも、注目したいところです。

・シュッピン（3179）

ライカなど高級カメラを中心に高級時計、万年筆、自転車など専門性の高い中古品や新品のネット通販を行う企業。箱付き、備品付き販売を重視するなど、中古品の価値保全に尽力する姿勢にも定評がある。

・クラシコム（7110）

北欧のヴィンテージ食器専門サイトとして創業。主力のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を通じて、世界中のこだわりグッズやオリジナル商品など、世界観を共有する顧客に向けた独自のネット通販を行っている。

・BEENOS （3328）

複数のeコマースサイトを抱えるグループ企業。海外の顧客向けに販売サポートを行う「Buyee（バイイー）」を運営するほか、ヴィンテージマニアにも人気の海外古着専門店「古着屋JAM」の海外販売をサポートするなど、ヴィンテージ品の越境販売にも注力している。

また、海外に目を向けるとヴィンテージ品を今も生産する有名ブランド企業やヴィンテージに特化した高級品を販売する新興企業などが米国市場に上場しています。

1853年にジーンズ発祥の地、米国西海岸サンフランシスコで創業したリーバイ・ストラウス社（LEVI）などは、まさにヴィンテージジーンズの愛好家にとっては憧れの存在とも言える企業です。

また、米国カリフォルニア州を中心に、受賞歴のあるワイナリーなどを多数運営し、ヴィンテージ色の強い希少な高級ワインを販売しているヴィンテージ・ワイン・エステイツ（VWE）なども関連銘柄として挙げられるでしょう。

英語圏で幅広くヴィンテージ品の売買が行える趣味性の高いマーケットプレイスを運営するエッツイ（ETSY）は、ジーンズなどファッションアイテムだけでなく、宝飾品や骨董品など歴史のあるヴィンテージ品を世界中で販売・購入できるサービスを展開しています。

リユース関連企業の中には、単に生活費を節約するための中古品流通サイトや転売目的に使われるフリマサイトが多いのも事実でしょう。とはいえ、人々のモノに対する愛着やこだわりを大切にしてビジネスを展開する企業も数多く存在します。