米ドル買いポジション手仕舞いの拡大

先週にかけて急激に広がった米ドル全面安の動きだったが、今週は一息ついた様相となっている。これは、この間米ドル全面安をもたらした一因と見られた米ドル買いポジション手仕舞いに伴う米ドル売りが、かなり進んだ影響もあるのではないか。

ヘッジファンドなどの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルで計算)は、10月には15万枚程度の買い越しとなっていたが、先週までに買い越しが3分の1程度に縮小した(図表1参照)。このデータを見る限り、米ドル買いポジションの縮小は最近にかけてかなり進んだ可能性がありそうだ。

【図表1】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

この背景には、米ドル以外の通貨が米ドルに対する売り越しを縮小したり、買い越しを拡大する動きが広がったということが考えられる。例えば、円のポジションは、10月には10万枚を超える買い越しとなっていたが、先週までに買い越しが6万枚程度まで縮小した(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

また、9月にいわゆる「トラス・ショック」と呼ばれる急落を経験した英ポンドだったが、そこで6万枚以上に拡大した売り越しは、先週にかけて3万枚程度とほぼ半減となった(図表3参照)。一方ユーロについては、9月から買い越しに転じていたが、先週にかけて買い越しの拡大が続いた形となった(図表4参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

非米ドル通貨のポジション動向は、米ドルの側から見ると、売り買いを差し引きしたネット・ベースで見た米ドル買い越しの縮小をもたらす要因だと思われる。このような米ドル買い越しを縮小させる動きは、為替市場において米ドル売りとなることから、先週にかけての米ドル全面安の一因となった可能性があるが、米ドル売りもこれまで見てきたことからすると、かなり進んだのではないだろうか。

米ドル買いポジション調整に伴う米ドル売りが峠を越えつつあることが、今週に入ってから米ドル全面安が一息ついた一因と考えられる。ただ、このCFTC統計を見る限り、米ドル買いの対価としての売りポジションでは、まだ相対的に円売りの大きさが目に付く。その意味では、来週にかけての米インフレ統計やFOMC(米連邦公開市場委員会)などの注目イベントなどをきっかけに、米ドル買いポジションの手仕舞いに伴う米ドル売り・円買いが入るリスクは、まだ気が抜けないかもしれない。