米ドル/円の現状の客観評価
米ドル/円は10月に151円まで米ドル高・円安となったが、最近にかけて一時133円台まで米ドル安・円高に戻した。こうした中で、客観的な評価にどのような「変化」が起こったかを確認してみよう。
まずは、米ドル/円と120日MA(移動平均線)との関係。米ドル/円は2021年1月の102円から上昇トレンドが展開してきたが、その中では基本的に120日MAを割り込むことはなかった。ところが、最近にかけて一時133円台まで米ドル急落となった動きは、120日MAを大きく下回る動きだった(図表1参照)。
米ドル/円の上昇トレンドが展開する中で起こらなかった120日MAを大きく割り込むという現象が起こったことは、トレンドの転換、つまり米ドル高・円安は10月の151円で終わったことを示している可能性があるだろう。
米ドル高・円安トレンドは151円で終わり、そうした中で米ドル/円は最近にかけて140円を大きく割り込むまで下落した。ただ、米ドル安・円高は、米金利から大きくかい離したものだった(図表2参照)。高い利回りに著変がないことを考えると、米ドル/円は「下がり過ぎ」の可能性がある。
短期的な「行き過ぎ」を調べる90日MAかい離率は、一時マイナス5%程度まで拡大した(図表3参照)。これは、極端に米ドルの「下がり過ぎ」懸念が強いことを示すものではなかった。しかし、上述の米金利との関係などと合わせて考えると、米金利とかい離する米ドルの「下がり過ぎ」には自ずと限界があるということではないか。
以上を整理すると、米ドル/円は10月の151円で天井を打った可能性があるものの、一方で最近にかけての140円を大きく割り込む動きは、米金利との関係などから「下がり過ぎ」懸念もあるということになるだろう。
では、最後に中長期的な米ドル/円の客観評価を、5年MAかい離率を参考に考えてみよう。5年MAかい離率は、米ドル/円が150円を越えた局面ではプラス3割以上に拡大したが、130円台まで下落したところではプラス2割程度まで縮小した(図表4参照)。これは、極端な米ドルの割高は修正されたものの、まだ割高圏にあるという意味になるだろう。
改めてこれまで見てきたことを整理すると、米ドルは天井を打った可能性があるものの、最近にかけての急落により、短期的な「下がり過ぎ」懸念から米ドル買い再開の可能性も出てきた。ただし、中長期的にはまだ米ドル割高圏にあることから、損失を限定化する工夫、投資額の抑制やストップロスを付けるなどの対応は必要になりそうだ。