米ドル/円の上昇は、日米金利差拡大が大きな材料

2022年の年明け、115.30円台から取引スタートした米ドル/円相場は10月21日に151.94円まで上昇しました。1年にも満たない短期間に30%を超える価格変動となった相場の裏では、かなりの投機ポジションが積み上がっていたようです。

しかし、米国インフレのピークアウト、利上げ幅縮小の思惑が台頭すると、あっという間に11月15日までの3週間程度で、137.65円まで9%あまりの下落となりました。

今回の米ドル/円の上昇は、日米金利差拡大が大きな材料となっています。ただし、原油やLNGなどの国際商品価格の上昇から輸入コストが急増した影響で、日本の貿易赤字が拡大したことも指摘されており、実需に絡んだ取引が為替レート水準を引き上げた側面もあります。

しかしながら、わずか3週間で9%もの下落となる水準訂正は実需取引だけでは説明ができるものではありません。つまり、20%を超える米ドル/円相場の上昇はファンダメンタルズから逸脱しており、また、その後の10%近くの上昇は、投機的ポジションが作り上げた加熱した価格であり、その分がきれいに剥落したということです。

米ドル高/円安トレンドはまだ終わっていない

投資家らの投機ポジションが形成したドル円151円台は今回の米ドル/円相場上昇サイクルの天井だったと考えています。とはいえ、これで円高へトレンドが変わったわけではありません。

投機ポジションの巻き返し以外に、今、円を買う材料があるでしょうか?米国の金利引上げサイクルが最終局面にあるとはいえ、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも利上げは実施されるでしょう。日本のゼロ金利政策に対し、米国政策金利はすでに4%まで引き上げられており、絶対的な金利差は円買いには働きません。

また、エネルギー自給率の低い日本はエネルギー価格がさらに崩れない限り、恒常的な貿易赤字が続くでしょう。これも実需取引上の円売り米ドル買い要因として働き続けます。ファンダメンタルズからは円売り/米ドル買い要因に変化が見られない中で、円高にトレンド転換したと考えるには時期尚早です。

円買いがテーマとなり得るイベントとは

米ドル高/円安のトレンドを転換させる可能性があるとすれば、日本の金融政策の転換でしょう。世界が金融引き締めに転換する中で日本だけが緩和政策を維持し続けています。

この強固な緩和政策を司ってきた、日銀の黒田総裁の任期は2023年4月8日までで、2023年の年明け早々には後任の総裁人事が話題となると思われます。新総裁が、いよいよ緩和政策から正常化、利上げ方向へと舵を切るなら、円売りトレンドの転換を考える必要が出てきます。

日銀の緩和政策からの脱却は、多くの市場関係者の2023年の為替市場の最大の関心事です。しかし、現時点では日銀の政策変更にかける円買いをスタートするにはまだ材料が不足しており、これが実際に市場のテーマとなるまでの間は米ドル/円相場は値幅を伴ったレンジ相場を形成すると見ています。

テクニカル分析からのレンジ想定

テクニカル的には今回の急激な円安ドル高相場の起点となった、3月の114.64円から151.94円までの上昇幅に対して38.2%押しの137.69円あたりで、今回の下落調整が完了しているとするなら、23%押し水準の143.13円近辺を上限としてのレンジ形成となりそうです。

米国の利上げ幅縮小が次なるテーマとなる中では、151円の高値を更新する上昇は難しいと思われます。逆に137.50円を割り込む事があれば、50%押し水準である133円台が下値サポートとなると見ています。