EV分野を筆頭に注目度高まるパワー半導体

2023年3月期の第2四半期決算で、パワー半導体関連企業の業績好調が目立っている。従来型のSi(シリコン、ケイ素)を使ったパワー半導体の拡大に加え、次世代型のSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使った化合物半導体という高性能タイプが普及期に入ったことが背景にある。

パワー半導体とはモータや照明などの制御や、電力の変換を行う半導体のことである。電気を交流から直流にしたり、電圧を変換するなどしてモータを駆動したり、メモリやCPU(中央演算処理装置)などのLSI(大規模集積回路)を動作させるなど、電源(電力)の制御や供給などを担う。

高い電圧、大きな電流に対しても壊れない構造を有することでパワー半導体と呼ばれる。今、最も注目を集めているのがEV分野だ。モータを低速から高速まで精度良く回すことでEVの性能を上げ、また効率良く動かすことで省エネ・省電力化に貢献する。EVの航続距離は次世代タイプで10%向上するとの見方もある。

EVの加速やGXによる脱炭素の流れから、パワー半導体に関連する企業のビジネスチャンスが拡大しそうだ。そこで、今回はパワー半導体関連を扱う、好決算銘柄をピックアップする。

オキサイド(6521)

半導体ウエハの検査装置向けに単結晶とレーザーの開発、製造を行う。企業側の発表資料に詳細の記載はないが、SiC向けにも展開しているとみられる。

第2四半期時点で2023年2月期の利益予想を上方修正しており、営業利益は従来予想の7億600万円から9億円(前期比50.8%増)になる見通しだ。EV分野で需要増加が見込まれるパワー半導体分野の事業化を加速させるため、研究開発費を従来の4億1100万円から7億1500万円に増やしながらの上方修正となっている。

また、SiC単結晶などの新事業推進室を新設している他、2021年6月にはGaN薄膜単結晶の成長に適した新材料基板のサンプル出荷を発表している。SiC、GaNなど次世代パワー半導体の拡大は同社の業績も牽引することになるだろう。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2022年11月15日時点)

サムコ(6387)

半導体など電子部品製造装置の研究開発型企業。1979年の設立以来、化合物半導体を加工する半導体製造装置を製造するとともに、化合物半導体の加工技術を蓄積してきている。また、SiCやGaNなどのパワーデバイス分野の成長にも貢献しており、EVや新幹線向けなどに供給している。

2023年7月期は売上高77億円(前期比20.3%増)、営業利益16億2000万円(同18.1%増)、1株利益134.4円を計画している。営業利益は4期連続の最高益更新となる。前期末の受注残高は50億2000万円(前年比65.8%増)と高水準となっている。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2022年11月15日時点)

エノモト(6928)

パワー半導体用のリードフレームを手掛ける。リードフレームとは、半導体のパッケージに使われる半導体素子(チップ)を支持固定し、外部配線と接続する部品のこと。外部配線との橋渡し役を果たすという重要な役割を担う。

2023年3月期は売上高286億円(前期比5.0%増)、営業利益22億円(同9.3%増)、1株利益247.3円を計画している。第2四半期のパワー半導体部門の売上高は54億8100万円(前年同期比16.9%増)。自動車向けでは電装化の加速やADAS向けなどで需要が増加している。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2022年11月15日時点)

ローム(6963)

カスタムLSIで首位を誇る、国内のパワー半導体有力企業。第2四半期決算発表時点で通期業績予想を上方修正している。2023年3月期通期の営業利益は従来予想の760億円から900億円(前期比25.9%増)になる見通し。EV分野の需要拡大が主因で、ADAS(先進運転支援システム)など自動車分野が牽引している。

ロームは2022年6月に福岡県・筑後工場に増設した、SiC新棟の開所式を行った。SiCパワーデバイスの生産能力強化のために2019年2月から建設していたもので、2020年に竣工し既に製造装置の納入を終え、試作や評価を繰り返しているとみられる。開所式を終え、新棟での量産体制を整える。

同社のSiCの世界シェアは現在約10%だが、新工場の稼働をテコに30%に引き上げ、2025年度に世界シェアトップを目指すとしている。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2022年11月15日時点)

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