米利上げ見通しは下方修正か

まず、来週11月1日に発表されるのは10月のISM(全米供給管理協会)製造業景気指数だが、好景気と不景気の境目とされる50ポイントを2020年春の「コロナ・ショック」以来、約2年半ぶりに下回る予想になっている。同じくISMの非製造業景気指数は3日に発表される予定だが、こちらは6月以来4ヶ月ぶりに年初来の最低水準である55ポイント台まで低下する予想になっている。

そして、4日は10月の雇用統計発表が予定されているが、NFP(非農業部門雇用者数)は前回の前月比26万人増加から15万人増加に、雇用増加数が縮小する予想になっている。予想通りなら、2021年12月以来の10万人台と雇用増加数が低水準にとどまることになる。

ちなみに、コロナ以前のNFPは、ざっくり言えば月間で10万人未満なら「悪い」、20万人以上なら「良い」といったところが絶対評価の目安だった。その意味では、今回も10万人台にとどまるならともかく、一気に10万人も下回るようなら景気が急悪化しているという印象が強まる可能性がある。

こうした中で、2日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が金融政策について発表する。非公式の「FRB(米連邦準備制度理事会)スポークスマン」とされるウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFRB担当者の記事では、この11月FOMCで0.75%の利上げを決定した上で、次回12月会合では0.5%への利上げ幅の縮小、さらに年明け以降の米利上げ打ち止めを議論するとの見方が示されていた。この背景には、景気急悪化への懸念があるのではないだろうか。

ちなみに、予想通り景気指標が悪化すると、特に長期金利は低下する可能性が高いと考えられる。米10年債利回りの90日MA(移動平均線)かい離率は最近プラス30%程度まで拡大し、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていただけに、景気指標の悪化など、金利低下要因に反応しやすくなっている可能性があるためだ(図表1参照)。

【図表1】米10年債利回りの90日MAかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

そのように長期金利が低下したら、短中期金利も下がる可能性があるのではないだろうか。米10年債利回りから2年債利回りを引いた長短金利差は、既に2000年以降では最大のマイナス幅に拡大してきた(図表2参照)。さらなる長短金利差マイナス幅拡大が難しくなってきた中で長期金利が低下するなら、短中期金利も低下する可能性がある。

【図表2】米10年債利回りと2年債利回りのスプレッド(2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上のように見ると、米利上げ見通しが下方修正されてきたのは、やはり景気見通しの悪化の影響が大きいのではないだろうか。そのような米金利の動きは、米ドル/円にも大きく影響しそうなだけに要注意だろう。