マネックス証券が掲げるブランドビジョン「大切なものに投資をしよう」。そこには、投資の価値を儲けや利益だけでなく、それぞれの未来や夢を実現させるものへと進化させていきたいという思いが込められています。ブランドビジョンを通じて、自分の好きなもの、大切なもののために活動する人々の“想い”を発信しています。

今回は、音楽フェスを盛り上げる活動を続けるフェスジャーナリスト・津田昌太朗さんの価値観をクローズアップします。

10代の頃から音楽が好きで、憧れのフジロックフェスティバルに参加したいという思いから、会場に近い東京の大学に進学した津田さん。大手広告代理店に就職した後も、そのフェス愛はとどまることを知らず、自ら立ち上げたサイト『Festival Life』で日本や世界の音楽フェス情報を発信したり、書籍『THE WORLD FESTIVAL GUIDE』を出版するなど多方面で活躍しています。

転機となったのは、会社の夏休みを使って参加した英国のグラストンベリー・フェスティバル。現在約20万人が参加すると言われる世界最大級の音楽フェスに衝撃を受けた津田さんは、帰国翌日に職場に辞表を提出。その後、英国をはじめ海外100ヶ所、国内300ヶ所以上の音楽フェスに足を運びました。

音楽フェスの本場である欧米の最新事情を紹介するだけでなく、信頼できるスポンサー探しなど、日本のフェス文化の普及・発展にも情熱を注いでいます。

そのポリシーは「好きが7割、仕事が3割。稼ぎ過ぎないこと」。多様な人々が集い、交流する一体感や解放感を大切に、好きなものや好きな人とのつながりから新たな価値を生み出す活動を続けています。

音楽フェスは新たなカルチャーであり、ライフスタイル創造の舞台

古くは1969年のウッドストック・フェスティバルに始まり、日本でも1997年から開催されているフジロックフェスティバル、また2000年開始の都市型フェスであるサマーソニックなど、現在では世界中の様々な場所で音楽フェスが開催されています。

音楽フェスが通常のコンサートと違うのは、飲食店が多数出店したり、観客が会場周辺の野外でキャンプをしたり、前夜祭で参加者同士が交流したりといった、日常生活では味わえない異空間を体験できることではないでしょうか。音楽と自然、そして参加者が一体となって湧き上がる熱狂や躍動、解放感を感じられる場所、それが音楽フェスなのです。

ロック、ジャズ、ポップス、テクノといった音楽ジャンルに限らず、海外では、壮大な装飾物でデコレートされた巨大舞台で、光と音を駆使したEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)系の音楽フェスが盛大に開催されるなど、独自の発展を遂げてきました。

フェス文化は音楽だけでなく、ファッションやカルチャー、旅やアウトドア、町おこしにつながる地方コミュニティの創出など、多様な人々が交流し、新たな価値観を生み出す創造の場にもなっています。

巨大な音響・映像設備やプロジェクトマッピング(※)を駆使したフェスも数多く開催されています。そのため、最先端テクノロジーを駆使した舞台装置や音響・照明に関連する企業は、裏方として音楽フェスを支える産業といえます。
(※)LED電飾などでCG画像などを投影する空間芸術。
 
会場周辺のキャンプ場で寝泊まりする滞在型の音楽フェスでは、キャンプ用品や防寒具など、アウトドアグッズも必需品といえます。また、音楽フェスを舞台にしたストリートスナップを広告宣伝に活用する企業もあるほどで、アパレル産業との距離感も近いものになってきています。

「フェス飯」という言葉はファンの間で広がり、会場に乗り付けたフードトラックで提供される食事や地域特産品にも注目が集まっています。また海外や日本で開催される音楽フェスは、旅行会社にとっても大きな収益源の1つになっていると考えられます。

近年日本では、地方自治体が村おこし、町おこしの一環としてフェス事業に取り組むことも多くなってきました。新たなローカルコミュニティの創生、フェスをきっかけにした地方移住など、地方再生もフェスがもたらす新しい価値観の1つかもしれません。大自然の中で大好きな音楽を体感することで、環境への配慮、自然との共生、ボランティア意識なども生まれることも想像できます。

他にも、コロナ禍の影響でVTuberやアニメキャラクー、無名アイドルたちが活躍するバーチャルフェスも発展、進化しました。仮想空間で様々なフェスを開催し、SNSの投げ銭機能を使って収益化も図るなど、好きなモノやコトを好きなもの同士で応援し共感し合うフェス文化は、インターネットビジネスとも親和性が高いといえます。

音楽フェスが社会にもたらす潜在的な可能性

日本でも海外でも、音楽フェスは出演アーティストたちが繰り広げる演奏に熱狂し、参加した人々が異空間を共同体験できる貴重なコミュニティの場として定着してきました。

地域の仲間たちとお祭り感覚で1からフェスおこしに励むなど、作り手側に回る人々も増えています。そんなフェス文化の広がりを考えたとき、どのような投資の機会が考えられるでしょうか。

幸せ・豊かさ:

音楽フェスという非日常空間を体験することで、心が癒され、解放感や連帯感を味わうことができる。

市場:

作り手を含め、音楽フェスに参加する人々のコミュニティが、衣食住の様々な面で新たな消費マインドを生み出す。

新しい価値観:

環境に対する配慮、世界とのつながり、地域社会との関わり、ボランティア精神など、人々の生活に新たな習慣や行動をもたらす。

成長・発展:

異空間を演出する音響テクノロジーや、デジタル技術を活用したバーチャルフェスの隆盛が、新たなコミュニティ創生の進化につながる。

未来を変える力:

モノではなくコト、消費ではなく共感や体験志向のライフスタイルやカルチャーが資本主義社会に新たな息吹をもたらす。

音楽フェスにつながる投資先とは?

音楽フェスには、アーティストが所属する音楽事務所、イベントのプロモーター、チケット販売会社、広告代理店や空間プロデュース企業、旅行会社など、実に様々な企業が関わっています。

日本や世界の音楽フェスを愛し、熱狂する人々が、よく見聞きし、親近感を感じる上場企業として、以下のような銘柄を挙げることができるかもしれません。

・ぴあ(4337)

フジロックフェスティバル、スーパーソニックなど日本有数の音楽フェスのチケット予約も行う国内チケット販売最大手。新型コロナウイルスの収束によるライブイベント再開で、業績を回復している。岸田政権が打ち出したイベント需要喚起のための「イベント割」が追い風に。

・ヒビノ (2469)

コンサート会場の音響・映像・空間演出を手掛ける企業。コンサート・イベントの年間サポート件数はのべ7,144日、1日平均20件に及ぶ。東京五輪などスポーツ大会の設営も収益源。国内最大級のジャズフェス「東京JAZZ」の空間演出を手がける他、観客動員数の多い人気コンサートのサポートでも圧倒的シェアを誇る。

・ゴールドウイン(8111)

フェスマニアに愛されるアウトドアギア「THE NORTH FACE」など、数々の海外アウトドア、スポーツブランドを製造販売するアパレル企業。コロナ禍による空前のアウトドアブームで、「THE NORTH FACE」の売上が伸びている。2023年3月期も前期に続く最高益更新が見通されている。

・スノーピーク(7816)

キャンプ用品などアウトドアグッズの製造販売メーカー。米国や中国など海外にも積極的に進出している。「焚火トーク」という名物コンテンツが行われる2泊3日のキャンプイベント「Snow Peak Way」なども人気。用具メーカーの枠を超え、独自のアウトドアライフの普及活動を行っている。

・大塚ホールディングス(4578)

音楽フェスの必需品といえる「ポカリスエット」も製造する医薬品メーカー。長年、フジロックやロック・イン・ジャパンフェスティバルの公式スポンサーを務めるほか、自社徳島ワジキ工場敷地内で毎年8月、エキサイティング・サマー・イン・ワジキというフェスも行っている。日本のフェス文化をサポートする協賛企業としてよく知られている。

今後、新型コロナウイルスが沈静化すると、人々がより密にアウトドアで交流できるイベントへの需要も高まりそうです。そうすると、音楽フェスに関連する企業にも、業績の成長が期待できるかもしれません。

上記のような音楽フェス関連株を株式市場で購入するには、100株単位となるため、10万円以上の高額な資金が必要です。ただ、1株単位で少額から購入できる単元未満株で取引できる場合もあります。

海外のフェス関連企業の中で、世界最大規模といえるのが米国のライブ・ネーション・エンターテインメント(LYV)です。日本でも「スーパーソニック」を運営するクリエイティブマンと共同出資してライブ・ネーション・ジャパンを設立。レディ・ガガやU2など世界的に有名なアーティストの日本公演を数多く手がけています。

リアルフェスとバーチャルフェスを融合させる力を持つ企業として注目したいのは、スウェーデンの音楽配信会社で米国株式市場に上場するスポティファイ・テクノロジー(SPOT)です

数千万以上の音楽やコンテンツをスマホやパソコンなどにストリーミング配信するサービスを提供しており、契約者は全世界で1.5億人を超えています。同社は日本のサマーソニックなど、世界の有名音楽フェスとコラボしたライブイベントも手がけています。

音楽のサブスクリプションビジネスは現在も世界中で急成長しています。2021年には利用ユーザーが5億人を突破し、CD販売の低迷で売上減少が続いた世界の音楽業界が回復する原動力になっています。

音楽フェスの魅力を知ることは、日本を見つめなおし、世界に目を向けるきっかけになるかもしれません。また、好きなミュージシャン、行きたいフェスと同じ感覚で、応援したい企業を探してみると、新たな投資の機会が見つかるかもしれません。

【図表】音楽フェスに関連する企業
銘柄コード 銘柄名 市場 株価 売買単位  いくらから投資できる?
(概算購入金額) 
企業情報
(4337) ぴあ 東証プライム 3,345円 100株 33万4,500円 国内チケット販売最大手。イベント再開の動きが広がり、チケット販売が上向く。横浜に建設した1万人規模のイベント会場「ぴあアリーナMM」も、業績回復が期待される。
(2469) ヒビノ 東証スタンダード 1,396円 100株 13万9,600円 コンサートやスポーツイベントの音響・映像機器設営で国内首位クラス。2021年東京五輪特需が剥落したものの、ドームイベント復活が追い風に。
(8111) ゴールドウイン 東証プライム 7,620円 100株 76万2,000円 海外ブランドとライセンス契約を結びアウトドアやスポーツウェアを製造販売するアパレルメーカー。音楽フェスでも愛用される「THE NORTH FACE」の販売が好調で、株価上昇。
(7816) スノーピーク 東証プライム 1,921円 100株 19万2,100円 コロナ禍での空前のアウトドアブームにより急成長を遂げたキャンプ用品メーカー。海外進出にも積極的。キャンプブームに沸く中国でも販路を拡大中。
(4578) 大塚ホールディングス 東証プライム 4,578円 100株 45万7,800円 抗精神病薬や血液がん治療薬に強い医薬品メーカー。ポカリスエット、オロナミンC、カロリーメイトなど一般消費者になじみの深い商品も販売。安定した業績と高利回りの株主配当金にも期待される。
(LYV) ライブ・ネーション・エンターテインメント 米国NYSE 78.66ドル 1株 11,641円 世界最大のライブ・エンターテインメント企業で同社のチケット販売システム利用者数は世界44ヶ国、6億人に迫る。米国などに235ヶ所を超えるコンサート会場を持ち、音楽フェスのチケット販売も行う。コロナ禍で落ち込んだ業績は2021年12月期以降、急速に回復。
(SPOT) スポティファイ・テクノロジー 米国NYSE 94.66ドル 1株 14,009円 スウェーデンに本社がある世界最大の音楽ストリーミング配信企業。有料会員数が着実に増加し、業績急成長が続く。ポッドキャストやオーディオブック事業に積極投資を行い、今後10年でさらに売上高10倍増を目指している。
※「概算購入金額」は2022年10月25日の株価の終値をもとに計算。
外国株は為替レート1ドル148円で円換算
出所:各種公表資料より大切なものに投資をしよう編集チームが作成。