みなさん、こんにちは。日経平均株価は欧米金利の上昇リスクを織り込む流れが継続し、かなり勢いを欠いた展開となっています。ボックス圏の下値を割り込むほどの失速感もまだ見えませんが、じりじりと調整色を増していることは確かでしょう。

特に為替相場などを見る限り、市場は何らかの金融政策転換を催促し始めているようにも感じています。引続き、流れが変化するきっかけに備え、少し厚めにキャッシュポジションを保持する方針で臨みたいところです。

今後はディフェンシブ銘柄にも注目か

さて、今回は「ディフェンシブ銘柄」をテーマに採り上げてみましょう。昨今は景気の減速懸念が高まってきました。第1四半期の企業業績は比較的堅調なものでしたが、今後はそれらも減速してくるとの見方が出てきています。これからの投資戦略を考える上で、景気の先行きに対する見立てはかなり重要になってくることでしょう。

しかし、そもそも景気の先行きを予測することには困難が付きまといます。まして、不透明要因が増加している状況での予測ではなおさらです。そうであれば、あらかじめ今のうちに景気変動の影響を受け難い産業や企業を投資対象の軸に据えておくという選択肢もあるのではないでしょうか。

ここでいうディフェンシブ銘柄とは「防御的な銘柄」という名称の通り、景気減速という逆風をも防衛できるような銘柄群を指します。今後、景気に慎重な見方が増えてくれば、それに伴ってディフェンシブ銘柄の注目度もまた高まってくるのではと予想します。

景気減速を防衛するディフェンシブ銘柄とは

では、そのようなディフェンシブ銘柄とは具体的にどういった産業や企業となるのでしょうか。一般論としてですが、生活に不可欠な医薬品や食品、生活インフラ(電力やガス、通信)などがその代表例と考えられています。

これらは景気が悪いからといって、大胆に圧縮・抑制できるような領域ではありません。景気動向にかかわらず、人間は食べなければなりませんし、生活をしていく上で水道光熱費も不可欠です。つまり、「(景気変動に対して)防衛的」という位置付けなのです。

その一方、ディフェンシブ銘柄投資の弱点は、景気拡大となった時に成長率で他の産業/企業から見劣りする可能性が高いという点にあります。前述の例に準えると、景気が良くなってきたからといって、1日に食べる量が急増することにはなりません。光熱費も同様です。そういった局面ではむしろ景気拡大と需要が連動する産業や企業の方がその恩恵を得ることができるのです。

ディフェンシブ銘柄における投資の考え方

ここでしっかりと認識しておかなければならないのは、ディフェンシブ銘柄投資の基本方針が「逆風下における防御」にある以上、これは対日経平均などとの相対パフォーマンスの向上にこそ大きく寄与するということです。言い換えれば、絶対リターンの追求戦略としてはそのマグニチュードは限定される傾向にあるのです。

もちろん、景気後退下で外食が減り、内食が増え、食品需要が拡大するといった成長シナリオを描くことはできますが、総需要が増加しているわけでも新たな需要が創出されているわけでもありません。

そのため、絶対リターンの拡大余地は理論上限定されてしまう、というわけです。絶対リターンを追求する投資家にとっては特にですが、あくまでディフェンシブ銘柄投資は「比較的安全な領域への一時的避難」戦略であると認識しておくべきでしょう。

生活様式の変容に伴うディフェンシブ銘柄とは

さらに、昨今はディフェンシブ銘柄に変化が生じてきていることにも注意を払う必要があります。交通関係がその代表例でしょう。かつて交通関連(空運や鉄道、バスなど)はディフェンシブ銘柄と認識されてきました。景気にかかわらず、通学・通勤需要が安定的に継続していたためです。

しかし、コロナ禍を契機にリモートでの勤務や授業が一気に浸透したことで、需要が安定しているとは言い難くなってきました。景気状況に応じて、出社や出張の抑制が強化される可能性は増してきていると言えるでしょう。

エネルギーに関しても、再生可能エネルギーや省エネ機器の普及、さらには資源価格の高騰もあり、ディフェンシブな性格は変わらないまでも、その防御性の高さはかつてと異なってきています。

新たなディフェンシブ銘柄とは

その一方、より防御性の高まってきた業界も散見されます。ここでの好例は通信や通信サービスでしょう。今やスマホなしでの生活は、特に現役世代においては、まず考えられません。

リモートで通学/通勤をカバーするとしても、通信環境が整っているということが大前提になるはずです。当然、通信環境の整備には(景気低迷下においてはなおさら)一定の投資が必要になってくるでしょうし、抜本的なオペレーション改善を図るならばDX(デジタルトランスフォーメーション)関連への費用も必須となるのかもしれません。

その結果、SaaS型のサービスも新たなディフェンシブ銘柄と考えます。個別企業や個人の支払うSaaS型サービスの利用料は比較的低額なケースが多く、契約を停止してもコストメリットはそれほど発生しないのに対し、逆に利便性消失のデメリットが予想されるためです。

景気の先行きはかなり不透明ではありますが、ディフェンシブ銘柄投資の本質を認識しつつ、銘柄選択ではこういった変化に細心の注意を払っておくことが重要だと考えています。