「記録的円安」の意味をどう考えるか?
9月13日発表された米8月CPI(消費者物価指数)上昇率が事前の予想を上回ったことから、インフレの是正が遅いとして、FRB(米連邦準備制度理事会)大幅利上げ長期化を警戒、米金利急上昇、米国株暴落、そして米ドル/円は144円台へ急騰となった。
このように、米ドル/円は、2021年1月の102円から、最近にかけて140円を大きく超えてきた。これはもちろん、米ドル高・円安トレンドが展開する中では、記録的なペースと言えるものだ。
ちなみに、今回米ドル高・円安トレンドが展開する中で、2021年1月から2022年9月にかけての米ドル最大上昇率は、2022年9月13日現在で41%程度。1つのトレンドの中で、米ドル最大変動率が今回のように40%以上となったのは、2000年以降では±含めても、2015年6月にかけて展開した米ドル高・円安局面以外になかった(図表1参照)。一般的に「アベノミクス円安」と呼ばれた局面のことだ。
それにしても、2015年にかけて展開した米ドル高・円安は、上述のように最大で6割を大きく超える米ドル高となったものの、それは3年8ヶ月も要した結果だった。一方で足元ではほんの1年8ヶ月程度で、既に米ドルは4割以上も上昇した。
その意味では、年間平均上昇率を比較すると、今回は2015年にかけて展開した「アベノミクス円安」も、これまでのところ上回って推移している。まさに「記録的円安」と言って良いかもしれない。
問題は、「記録的円安」が示唆することは何かということ。これまでほとんど見たことのないほどのペースでの大幅な円安は、単に経験的な「行き過ぎ」ということなのか、それとも「新たな円安時代」の始まりということなのか。
普通なら、前者の可能性が高いだろう。相場の変動は循環が基本で、その説明を超えた動きを「新たな円安の始まり」といった具合に、経済構造の変化を受けたものと受け止めるのは見誤りであるケースが多かった。
以上からすると、最近にかけての米ドル高・円安は、「新たな円安の始まり」といった具合に、さらなる米ドル高・円安の可能性に期待するより、むしろその逆で米ドル高・円安「行き過ぎ」の可能性を懸念する必要があるのではないか。