出井さんはとてもGIVINGな方です。GIVINGとは、「寛大」と訳されることが多いですが、文字通り自分の持たれているものを惜しみなく他人に提供される、という意味です。

マネックスがまだ出来る前、マネックスに出資して欲しいとソニーさんと交渉している時、ソニーの本社で大賀さんと出井さんと会うことがありました。確かその時は大賀さんが会長で出井さんが社長でした。大きくて長いテーブルのこちら側に私ひとり、向こう側に出井さんと大賀さんが並んで座られていたのですが、途中から出井さんはテーブルの上に身を乗り出して、私の方から大賀さんを見るのと同じ向きに体を捻って、大賀さんに対してマネックスの意義の応援説明をして下さいました。

マネックスが生まれた後も、私が初めてダボス会議にGLT(Global Leaders for Tomorrow)という若者招待枠で行けることになった時、出井さんはその年のダボス会議の共同議長をされていたと思うのですが、出井さんは日本からプライベートジェットで行かれるだろうと思い、電話でお聞きしたら「そうだよ」と仰るので、「席空いてますか?」と伺ったら、「うん、いいよ」と便乗させて下さいました。

出井さんは本当に素晴らしいワインセラーをお持ちなのですが、一度一緒にそのセラーからワインを数本持って飲みに行こうと話になった時、リビングのテーブルに既に数本選ばれて並んでいたのを横目で見てセラーに入った私は、そのセレクションの素晴らしさに驚嘆し、「出井さん、ここから今日の選んで持って行っていいですか」と伺ったら、「いいよ」と仰るので、とても自分では手が出ない憧れのワインをいい方から順番に数本抜き出しても鷹揚とされていて、リビングに既にあったものとは入れ替えてそれらをレストランに持って行き、楽しく飲んだりもしました。

こんなことを書くと、私は無心してばかりのようですね。申し訳ありません。他の人にしたことはありません。何故か出井さんだけ、そんなことを聞きたくなってしまって、出井さんもクスッとするような感じで応えて下さったのです。出井さんは、本当に心の広い方です。Human Rights Watchと云う国際的な人権擁護NGOの活動にも、私がお誘いして参加・応援下さったのですが、出井さんのご存知の色々な方を、やはり惜しみなくHuman Rights Watchに紹介下さいました。

GIVINGな人とは、出井さんのような人を云うのだと思います。社会的で、教養があって、後生を導き、育て、恐い時もあるけど偉そうでは一切なく。本当にカッコいいです、出井さん。尊敬します。少しでも出井さんのような人間になれるように、精進していきたいと思います。