先週金曜日の米国株市場では、取引開始前に発表された雇用統計の内容を好感し、朝方は買いが先行し、ダウ平均は一時370ドル高まで買われた。だが、買い一巡後は一転して売り優勢となりダウ平均は午後に474ドル安まで下げる場面があった。依然としてFRBの金融引き締め姿勢が緩むことはないとの見方が広がった。ロシアのガスプロムがガスパイプライン「ノルドストリーム」の停止延長を発表したことも相場の重石となった。

「依然としてFRBの金融引き締め姿勢が緩むことはないとの見方が広がった」と市況解説に書いてあるから、そのまま小欄でも引用した。しかし、それが本当かどうかは分からない。何人かの市場関係者がそうコメントしたからって、すべての市場関係者がそう考えたかどうかなんて、誰にも分からない。

事実は、朝方の買いが続かず、結局、下げて終えたということだ。その理由について僕は、今の長期金利に見合う水準までの調整が不十分だから、だと思う。ストラテジーレポートで書いた通り、長期金利が3.2%の水準なら今の業績見通しではS&P500は3,800ポイント程度が妥当な水準だ。

一方、「FRBの金融引き締め姿勢が緩む」可能性は着実に高まっている。第一関門である雇用統計は、「その意味においては」良い結果だったと言える。平均時給は前年比5.2%上昇と予想(5.3%)を下回り、失業率は3.7%と予想(3.5%)外に上昇(悪化)した。労働参加率が上昇しており、供給制約(人手不足)が改善する方向にある。続く物価指標でも着実にインフレのピークアウト確認がなされれば、FEDの引き締めに対する過度な警戒も薄らいでいくだろうが、それにはもう少し時間を要する。

そうした中、今週はFED高官の発言機会が相次ぐが、なかでも注目はやはりパウエル議長だ。ケイトー研究所40周年記念金融カンファレンスでの討論会に参加する。発言はおそらくジャクソンホールのスタンスを踏襲したものになるだろう。株式市場がここまで調整していることもあって、ジャクソンホール以上のタカ派傾斜は考えにくい。だとすれば、ネガティブ・サプライズはないだろう。

もうひとつの注目材料は、8日から開催される欧州中央銀行(ECB)定例理事会だ。米国のCPIはガソリン価格の低下でピークアウトの兆しがあるが、欧州ではエネルギー危機で天然ガス価格が高騰するなどインフレ減速の兆しが見られない。今回の理事会では75bpsの大幅利上げの可能性もあるが、欧州のインフレはロシア・ウクライナ戦争と500年ぶりと言われる異常気象の影響が大きく、利上げでどうなるものではない。むしろインフレが高止まりする中、景気悪化を招きスタグフレーションに陥るリスクが高い。

日本株は相対的に優位な立場にあり、消去法的にグローバル・マネーの受け皿になる可能性はある。140円台をつけた円安も追い風であることに加え、7日から入国者数の上限が引き上げられ、インバウンドなど経済再開期待が高まる。8日に発表される8月の景気ウォッチャー調査も注目だ。

その他、注目のイベント・材料としては5日のOPECプラス会合、6日のISM非製造業景況指数、7日の米地区連銀経済報告(ベージュブック)、アップルの新製品発表会、9日のメジャーSQなどがある。

繰り返しになるが現在の長期金利水準では米株はまだ調整余地が残る。しかし、6月安値からの上昇分の半値押しまできており、そろそろ下げ止まってもいい頃だ。米国株が落ち着けば、日本株は2万8000円台を回復するだろう。