ボラティリティ上昇が続く米ドル/円

9月2日は米8月雇用統計の発表が予定されている。前回は、注目のNFP(非農業部門雇用者数)などが総じて予想を上回る、「ポジティブ・サプライズ」となったことを受けて2円以上もの米ドル一段高となった(図表1参照)。では今回はどうか?

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2022年7月~)
出所:マネックストレーダーFX

前回の雇用統計発表だけでなく、このところ注目の景気指標などを受けて相場が大きく動くケースが増えている。その代表例が、8月10日の米7月CPI(消費者物価指数)発表を受けた米ドル急落だろう。この日は、CPIの前年比上昇率が予想を下回ったことを受けて、米インフレのピークアウト期待から、米金利低下を見込む形で米ドルは急落となった。この日の最大値幅は3円以上となり、米ドル陰線(米ドル安)引けとなった。

他にも、7月14日は米6月PPI(生産者物価指数)、そして同22日は米6月小売売上高といった市場の関心の高い景気指標発表を受けて、当日の米ドル/円最大値幅はともに2円以上であった。

以上のように、注目指標の結果に対する相場の反応、いわゆるボラティリティは大きく上昇しているようだ。その意味では、もちろん指標結果次第という面はあるだろうが、9月2日の米8月雇用統計発表を受けて、この日の値幅が2円以上に急拡大する可能性は、一応想定する必要があるだろう。

「先行指標」ネガティブ・サプライズへの警戒

では、米8月雇用統計発表に予想から大きく外れるといった「サプライズ」はあるだろうか。あるとしたら、それは予想より悪い「ネガティブ・サプライズ」か、それとも逆の「ポジティブ・サプライズ」か。

8月31日に、「米雇用統計の先行指標」の1つと位置付けられているADP統計が発表された。それは、前回の結果も、事前の予想も大きく下回る「ネガティブ・サプライズ」だった。念のために数字で確認すると、前回は前月比で26万人の増加、そして今回の予想平均は同29万人の増加だったが、結果的には13万人の増加にとどまった。これを受けて、雇用統計のNFPに対しても、「ネガティブ・サプライズ」への警戒が一部で浮上したようだ。

ネガティブでもポジティブでも、予想からかい離した「サプライズ」なら尚更、米ドル/円は瞬間的に大きく一方向に動くといった、ボラティリティの高い傾向が続いてきただけに、9月2日の「雇用統計相場」も要注意だろう。

ただ、これまでも述べてきたように、米ドル/円は米金融政策を反映する米2年債利回りと高い相関関係が続いてきた(図表2参照)。仮に8月米雇用統計が「ネガティブ・サプライズ」となっても、それにより9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ見通しが、今のところの0.5~0.75%といったところから下方修正にならない限り、米ドルの反落も限られる可能性が高いのではないだろうか。

【図表2】米ドル/円と米2年債利回り(2022年3月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成