先週金曜日のダウ平均1,000ドル安は過剰反応。今週はその反動もあり、下げを埋め戻す展開となるだろう。そうは言っても週明けの日本株相場は大幅反落を免れ得まい。但し、円安が進んでいることもあり、米国株ほどの下落にはならないだろう。日経平均の下値目途は25日移動平均がある2万8240円辺りを想定する。その辺りで下げ渋って、それ以降は週を通じて節目の2万8500円近辺での一進一退となるだろう。理由は週末に米国の雇用統計を控えて様子見姿勢が優勢になるからだ。後段で述べる通り、今回の雇用統計はこれまで以上に重要な意味を持つ。

パウエルFRB議長のジャクソンホール講演に対する米国株式市場の反応は過剰である。僕もそうであったが、パウエル議長講演は淡々とした無難なものに終わると考えていた向きが多かったのだろう。なぜならジャクソンホールは単なる経済シンポジウムであり金融政策を議論したり、今後の方向性を提示したりする必要のない場であるからだ。それが、想定以上に「タカ派」的なメッセージが飛び出してきたことで市場が動揺したという面はある。

ただし、パウエル議長の発言は「タカ派的」というより、インフレ抑制に強い意志をもって臨むという決意表明で、ある意味、FRB議長として当然のことを述べたに過ぎない。議長は、「次回の会合でも異例の大幅な引き上げが適切である可能性がある」と前回述べた発言をリマインドした一方で、「9月会合での我々の判断は、入ってくるデータおよび進展する見通しを総合的に判断することになる」「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれて、ある時点で、金融政策の引き上げペースを緩めることが適切となる可能性がある」という点も繰り返している。

バイアスを排除して考えれば、結局、データ次第だろう。議長は、「7月のインフレ率の低下は歓迎すべきだが、1ヶ月の改善では、インフレ率が低下していると確信するまでに委員会が確認すべき内容には程遠い」と述べた。ではこれが2ヶ月連続ならどうか。9月13日発表のCPIでも伸びは鈍化するだろう。

講演直前に発表された7月のPCE価格指数は前月比0.1%低下。6月の1.0%上昇から下げに転じた。前月比で下がったのは2020年4月以降で初めて。前年同月比は6.3%の上昇だが伸び率は6月の6.8%から鈍化。今年1月以降で最も低い伸びとなった。コアPCE価格指数は前月比0.1%上昇。6月の0.6%から低下し、21年2月以来最も低い伸びとなった。前年同月比は4.6%上昇。伸びは6月の4.8%から鈍化し、9ヶ月ぶりの低水準となった。そもそもコアPCE価格指数はFRBがウォッチしている指標だ。それが順調に低下している。ここに来月発表のCPIが2ヶ月連続で落ち着いた結果となれば、「データ次第」というからには9月FOMCは75bpsではなく50bpsの利上げとなるだろう。

もうひとつ重要なデータは今週末発表の雇用統計だ。8月の非農業部門雇用者数は前月比29万人強増加の見込み。50万人以上伸びた前月からは増加ペースが鈍るだろう。労働市場のタイト感が後退していることを確認できれば9月FOMCでの利上げ減速に一歩近づく。FOMCは総合判断というが、雇用統計とCPI、そしてミシガン大学消費者マインド指数の中長期インフレ期待、この3つが決め手になるだろう。