過去4回の「ポスト円安」を検証

2021年以降、円安が大きく進んだ。ただどんな相場にも普通なら終わりが来る。ではこの円安が終わった後は、どんな円高が起こるのか。それについて、過去の円安トレンドを参考に考えてみたい。

1990年以降の米ドル高・円安トレンドは、これまで5回あった。それぞれの米ドル高・円安のピークは、1990年4月160円、1998年8月147円、2002年1月135円、2007年6月124円、2015年6月125円だった(図表1参照)。この5回のうち、1998年以降の4回について、円安が終了した後、どの程度のペースで円高に戻したかを調べてみる。

【図表1】米ドル/円の推移(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

まず、1998年8月に147円で米ドル高・円安終了となると、早速翌9月には130円割れまで米ドルは急落、ほんの1ヶ月で10%以上も米ドル安・円高に戻すところとなった(図表2参照)。当時は、1998年9月の大手ヘッジファンド破綻などを受けて金融危機の様相が急拡大したことから、米ドル安・円高への反動も勢い付いたと見られた。

【図表2】米ドル/円の月足チャートその1(1998~2003年)
出所:マネックストレーダーFX

これに対して、2002年1月135円で米ドル高・円安終了となったケースは、約2ヶ月後には126円台まで、つまり最大で6%以上、米ドル安・円高に戻したものの、10%以上米ドル安・円高に戻したのはその年の6月だったので半年近くも後のことだった。

次は、2007年6月、124円で米ドル高・円安が終了したケース。この時は、約2ヶ月後には111円まで約10%の米ドル急落となった(図表3参照)。当時は、サブプライム・ショックと呼ばれた信用バブル崩壊が急拡大に向かった。中でも最初のショック相場となったパリバ・ショックに巻き込まれたことから、米ドル安・円高への動きが加速したと考えられた。

【図表3】米ドル/円の月足チャートその2(2007~2016年)
出所:マネックストレーダーFX

最後に取り上げるのは、2015年6月に125円で米ドル高・円安が終了したケース。この時は、約2ヶ月後に116円まで米ドル急落、米ドルの最大下落率は8%近くに達した。この2015年8月に中国による突然の人民元切り下げをきっかけに世界的な株暴落が起こるといった「チャイナ・ショック」に巻き込まれた影響が大きかっただろう。ただ、米ドルのピークからの下落率が10%以上に拡大したのは翌2016年2月以降となったので8ヶ月以上も要するところとなった。

以上、過去4回の円安トレンドについて、円安終了後どのようなペースで円高に戻したかについて調べてきた。4回全てに共通したのは、円安終了後ほぼ2ヶ月程度で5%以上の米ドル安・円高に戻していたということ。ただ10%以上といった具合により大きく米ドル安・円高に戻すまでには、「××ショック」に巻き込まれた結果、ほんの1~2ヶ月でそれが実現したケースもあったが、逆に「××ショック」のようなことがなかった場合は、円安終了から半年以上かかったケースもあった。

さて以上見てきたことを参考に、今回の円安終了後のシナリオを想像してみよう。仮に、米ドル高・円安が140円で終了したとして、それから5%米ドル安・円高に戻す水準は133円、10%米ドル安・円高に戻す水準は126円といった計算になる。

仮に、140円で円安が終了したら、経験的には2ヶ月以内に130円近くまで米ドル安・円高に戻す可能性が高そうだ。「ショック相場」に巻き込まれた場合は、さらに125円を目指すタイミングが早まる可能性がある。そういったことがなくても、半年程度では125円近くまで米ドル安・円高に戻すといった見通しが基本になるのではないか。