4~6月期予想はマイナス1.2%に上方修正=GDPナウ

7月末発表予定の米4~6月期GDP成長率(速報値)が、いつも以上に為替市場関係者の間でも注目されているようだ。1~3月期のマイナス1.4%に続き、2四半期連続のマイナス成長となることで、定義上「リセッション」とされる可能性があるからだ。

この2四半期連続マイナス成長の可能性について、現実的に受け止められる大きなきっかけとなったのは、「米GDP早読み」で定評のあるアトランタ連銀のGDP予測モデル、GDPナウが7月1日に更新した4~6月期予想をマイナス2.1%としたことだった。

そのGDPナウは、注目度の高い米経済指標の1つである米雇用統計が8日に発表された後、この4~6月期GDP成長率予想をマイナス1.2%へ上方修正した。なお4~6月期についてはマイナス成長予想ではあるものの、マイナス成長の「程度」はやや改善方向に動いている。こういったことは、先週後半、米金利が上昇した一因でもあっただろう。

それにしても、このような米景気の「リセッション」見通しは、米利上げ見通しに影響する可能性がある。今回の米インフレを「的中させた」とされているサマーズ元財務長官は、あるインタビューの中で、「リセッション入りが自分の予想より早まるリスクが高まっている」と指摘した上で、「実際にリセッション入りした場合、米金融政策当局には引き締めを弱めることが求められるだろう」との見方を示していた。

2四半期連続のマイナス成長を、「テクニカル・リセッション」と呼ぶ。このため、4~6月期がマイナス成長となった場合は、「リセッション」の可能性により、利上げ見通しを下方修正する可能性が出てくる。

そんな米利上げ見通しは、これまでの米ドル高・円安を正当化した可能性があった。米金融政策を反映する米2年債利回りが米利上げを織り込む形で上昇してきた動きは、137円近辺までの米ドル高・円安とほぼ重なって推移してきた(図表参照)。

【図表】米ドル/円と米2年債利回り(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

この関係がこの先も基本的に続くなら、米ドル高・円安の行方は、米利上げ見通し次第ということになる。そして米利上げ見通しにとっての目先の最大の焦点が、7月末の4~6月期GDP成長率発表により、2四半期連続のマイナス成長で、「リセッション」の可能性が高まるかということ。以上のような構図の中で、7月末発表予定の米GDP成長率に、いつも以上に為替市場関係者の注目度も高まっていそうだ。

また米GDPとは別に、インフレ関連指標の発表は今週も相次ぐ予定となっている。13日が米CPI(消費者物価指数)、14日はPPI(生産者物価指数)、そして15日はミシガン大学消費者信頼感指数。

このうちミシガン大学消費者信頼感指数は、1994年以来の0.75%といった大幅利上げを決定した6月FOMC(米連邦公開市場委員会)の後で、パウエル議長が「長期インフレ期待」への懸念として引用したことで、改めて注目が高まった。

次回の「米GDP早読み」、アトランタ連銀のGDPナウの予想値修正は、7月15日の予定とされている。上述の注目イベントの結果を受けて、同予想修正の有無は、「米リセッション」の判断を主なきっかけに、米金利への影響を通じ、米ドル/円の当面の行方を考える上でも大きな関心を集めそうだ。