大相場は全て「指し値オペ」がきっかけ

3月以降、米ドル高・円安の大相場が広がっている。その中で、一日の米ドル/円最大値幅が2円程度以上もの大幅なものとなったのは、3月28~30日、4月19~20日、そして4月28日の3回だったが、全て日銀の金利上昇を容認しない「指し値オペ」発表がきっかけとなったものだった。

日銀は現在、10年物国債を利回り0.25%で無制限に購入する指し値オペを行っているが、利回りが0.25%に近付き、それを連続で行うことを発表したのが3月末、そして再び0.25%まで利回りが上昇したことで指し値オペの再出動となったのが4月中旬、さらに原則的に毎営業日指し値オペを行うと発表したのが4月28日。この指し値オペについての発表が、全て円安大相場のきっかけとなってきたわけだ(図表1参照)。

【図表1】日本の10年債利回りの推移 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上からすると、日本の金利が大きく動いているような印象にもなりそうだが、ただそれは全く違う。2022年に入ってからの日本の10年債利回りの最大変動幅は0.2%程度なのに対し、米10年債利回りのそれは1.4%程度。日米の10年債利回りを同じ目盛で重ねてみると、日本の10年債利回りはほとんど横這いと言っていいだろう(図表2参照)。

【図表2】日米の10年債利回りの推移その1 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

日本の金利は小動きで安定しているにもかかわらず、これだけ頻繁に金利上昇阻止策の発表に追い込まれたのは米国の影響だろう。日米の10年債利回りを、目盛を別にして重ねてみると、プライス・パターンは連動性が高いことがわかる(図表3参照)。「世界一の経済大国」米国の金利動向は、グローバリーゼーション時代にあって、他の先進国の金利への影響が極めて大きいということだろう。

【図表3】日米の10年債利回りの推移その2 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ちなみに、図表4は米国と独の10年債利回りを重ねたものだが、こちらは最近までほぼ重なり合った状況が続いてきた。これに対して、日米の10年債利回りのかい離が拡大したのは、指し値オペを連続で行うなど強化したところから。以上のように見ると、指し値オペの強化がなかったら、日本の10年債利回りは足元で0.4%を目指すまで上昇していた可能性が高いだろう。

【図表4】米独の10年債利回りの推移 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

日本のゴールデンウィーク(GW)の最中の5月4日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が行われるが、以上見てきたことからすると、米金融政策の決定が米金利を通じ日本の金利にも影響し、日銀のさらなる金融政策への思惑から米ドル/円のボラティリティー(変動率)を高める可能性は注目されそうだ。