ポジションと90日MAかい離率

米ドル高・円安は3月に急拡大し、先週は一時125円を記録、2015年以来の米ドル高・円安水準に達した。ただ、さすがに記録的なペースで米ドル高・円安が広がる中で、中長期トレンドとは別に、とくに短期的には「行き過ぎ」の兆しも出てきた。

その1つは、円の「売られ過ぎ」懸念。マーケットのリードオフマンとして知られ、ヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、先週の段階で売り越しが10万枚以上に急増した(図表1参照)。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション (2015年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これまで、同売り越しは15万枚前後まで拡大したこともあった。ただ、経験的には、売り越しが10万枚以上に拡大すると、円の「売られ過ぎ」を警戒する必要がありそうだ。その意味では、円安が急拡大する中で、円の「売られ過ぎ」への懸念も着実に高まっている可能性はありそう。

では、そんな円の「売られ過ぎ」の裏側で、米ドルも「買われ過ぎ」懸念が拡大しているかと言えば、実はそれは微妙なようだ。同じくCFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドルの主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルのポジションからの試算)は、買い越しが先週17万枚まで拡大した。ただ、同買い越しは過去には40万枚近くまで拡大したこともあったので、少なくともこのCFTC統計を見る限りでは、「買われ過ぎ」懸念が強いというほどではないのではないか(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ポジション以外の指標についても見てみよう。米ドル/円の短期的な行き過ぎを点検する上で、90日MA(移動平均線)かい離率を見ると、先週にかけて125円まで米ドル高・円安が進む中で、同かい離率はプラス7%以上に拡大した(図表3参照)。

【図表3】米ドル/円の90日MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

同かい離率は、2000年以降でプラス10%以上に拡大したことも3回あった。ただ、基本的にはプラス5%以上に拡大すると、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まり、米ドル/円の上昇一巡となることも少なくなかった。

以上、今回はとくにポジションと短期的な行き過ぎの可能性について点検してきたが、円の「売られ過ぎ」懸念、そして短期的な円安の行き過ぎへの懸念が拡大している可能性があることには一応の注意が必要なのではないか。