120円に届かなかった「トランプ・ラリー」

先週から米ドル高・円安が再燃した。では、このまま120円の大台に届くことになるだろうか。それを考える上で、今回は近年の代表的な米ドル高大相場である2016年の「トランプ・ラリー」と比較してみる。

「トランプ・ラリー」とは、2016年11月の米大統領選挙で共和党のトランプ候補が勝利したことをきっかけに、僅か1ヶ月余りで101円から118円まで米ドルが暴騰した相場だ。ただし、この相場の米ドル高のピークは、2016年12月15日に記録した118.65円、終値では118.22円だった(図表1参照)。要するに、「トランプ・ラリー」は、結果的に120円の大台に届かなかったわけだ。

【図表1】米ドル/円の推移 (2016年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

では、なぜ「トランプ・ラリー」は118円台で終わり、120円の大台に届かなかったのか。1つの理由は、上述のように僅か1ヶ月余りで101円から118円まで米ドル暴騰となった中で、さすがに短期的な米ドル「上がり過ぎ」懸念が強くなったためだろう。

米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は、「トランプ・ラリー」のピークとなった2016年12月15日にプラス12%以上に拡大した(図表2参照)。これは、2010年以降では最高。以上のように見ると、2010年以降で短期的な米ドル「上がり過ぎ」懸念が最も強くなる中で、「トランプ・ラリー」の米ドル高は、120円の大台を前にしてピークを打ったということだろう。

【図表2】米ドル/円の90日MAかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これに対して、足元はどうかと言うと、米ドル/円の90日MAかい離率は先週末の時点でも2%程度に過ぎず、その意味では短期的な米ドル「上がり過ぎ」懸念はほとんどない。これは、米ドル/円の絶対水準こそ、「トランプ・ラリー」のピークとほぼ肩を並べてきたものの、両者の米ドル上昇ピッチに大きな差があったためだろう。このため、今回は「トランプ・ラリー」と異なり、米ドルの短期的な「上がり過ぎ」が拡大する余地はまだまだ十分あることから、120円を超えていく可能性はありそうだ。

「トランプ・ラリー」が120円の手前で終了したもう1つの理由は、米ドル高のリード役となった米金利の影響だったのではないか。「トランプ・ラリー」のピークとなった2016年12月15日、米10年債利回りの90日MAかい離率はプラス40%で拡大一巡となった(図表3参照)。これは、米金利も当時短期的な「上がり過ぎ」懸念がかなり強くなっていたことを示している。

【図表3】米10年債利回りの90日MAかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上のように見ると、「トランプ・ラリー」の米ドル暴騰をリードした米金利の上昇が短期的に「行き過ぎ」懸念が強くなり、そして米ドル自体も短期的「上がり過ぎ」懸念が強くなる中で、米ドル高は120円の大台を前にして終わったと言うことだったのではないか。

さて、この米10年債利回りの90日MAかい離率も、足元では20%程度なので、「トランプ・ラリー」のピークほどには短期的な「上がり過ぎ」懸念は強くない。その意味では、今回の場合は、「トランプ・ラリー」に比べるとまだ米金利上昇が米ドル高をリードする可能性もあるのではないだろうか。