ユーロ/米ドル

ウクライナ危機が続く中で、金融市場はエネルギー相場などを中心に激しい値動きとなっているが、為替相場で目立っているのはユーロ急落だろう。ユーロ/米ドルはいよいよ1.10米ドルの大台も大きく割り込んできた。

こういった動きの中で、ユーロ/米ドルは長く続いた小動きの下放れが明らかになってきた(図表1参照)。基本的に、相場は小動きが長くなるほど、エネルギーが溜まるので、そんな小動きの終了とともに、溜まったエネルギーが発散されて一方向に大きく動きやすくなる。

【図表1】ユーロ/米ドルの推移 (2021年10月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ユーロ/米ドルは、そんなふうにユーロ安に動きやすくなっているところに、ウクライナ危機の拡大は、地理的、経済的にユーロ安要因なので、とても素直にユーロ安拡大となっているということだろう。

長く続いた小動きをブレークすると、当面はその小動きのレンジまで戻らない可能性が高い。その意味では、ユーロ/米ドルは長く続いた小動きのレンジ下限、1.12米ドル以上には当面戻ることなく、ユーロ安値の更新が続く可能性が髙いのではないか。

では、ユーロ安はどこまで広がるのか。例えば、「パリティ割れ」はあるのか。パリティとは等価、つまり1ユーロ=1米ドル割れもあるかということだが、個人的にはその可能性も十分あるのではないかと考えている。

ユーロ/米ドルの年間値幅は2021年の場合でも1100ポイント程度だったので、2022年のユーロ高値が1.15米ドルとして、それを1100ポイント下回ると1.04米ドルといった計算になる。要するに2021年程度の動きでも1.05米ドルは割れそうなので、勢いづいたら1米ドル割れも十分あるのではないか。

ちなみにユーロ安は、経験的に52週MA(移動平均線)を10~15%下回ったところで一巡となってきた(図表2参照)。足元のユーロ/米ドルの52週MAは1.165米ドル程度なので、それを10~15%下回るまでユーロ安が進むなら、まさに1~1.05米ドルが目標になるといった見通しではないか。

【図表2】ユーロ/米ドルの52週MAかい離率 (2005年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ユーロ/円

ところでユーロはユーロ/円でもレンジを下抜けてきた(図表3参照)。こちらは、もう一年近くも、その意味ではユーロ/米ドル以上に長くレンジ相場が続いていたのだが、それを下放れとなると、ユーロ安拡大が注目されるところだろう。

【図表3】ユーロ/円の推移 (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

クロス円は全般的に小動きが続いてきたが、かりにユーロ/円が一段安に向かうなら、ユーロ/円の下放れが他のクロス円にも波及するかは一応要注意だろう。そして、かりにクロス円全体が下落拡大に向かうようなら、つまり円高ということなので、次にはそれが米ドル/円の円高リスクに波及する可能性にも注意が必要になる可能性が出てくるかもしれない。