欧州問題で世界的にリスク資産からの逃避が続いており、中国株も大きな影響を受けています。香港H株指数は急落を続けており、2011年9月の安値に向けて大きく下げているところです。欧米の投資家が多い香港市場に比べて中国本土市場は比較的下げ方は緩やかですが、それでも3~5年の長期チャートで見ると、下向きに走っている200日移動平均線に頭を押さえつけられる形で下がっており、嫌な形です。
一方、中国本土のニュースを見てみると、5月前半の人民元建ての新規融資が4月に引き続き弱いことが伝えられています。中国の人民元建ての新規融資ですが3月は1兆100億元と好調だったのですが、4月は6818億元と急減。5月も横ばいで推移している模様です。これは企業の資金需要が弱くなっていることを意味しているのだと思います。ただ、前回お伝えしたように5月18日付けで預金準備率が0.5%引き下げられていますので、これにより4,000~5,000億元程度の資金が開放されます。これで融資が伸びれば問題ないのですが、今月と来月の融資額は注意して見ていきたいところです。
もう1つの重要なニュースはようやく消費刺激策が出てきたことです。省エネ基準をクリアーしたエアコン、フラットパネルテレビ、冷蔵庫洗濯機、湯沸かし器に265億元、LED照明に22億元、1600cc以下の省エネ自動車に60億元、高効率の電機機器に16億元の政府補助金を支給するというものです。2011年からスタートした第十二次五カ年計画では7大戦略的新興産業(省エネ・環境、新エネルギー、バイオ、次世代情報技術、最先端機械設備、新エネルギー自動車、新素材)の発展育成政策を重点政策として掲げており、この7大産業がGDPに占める比率を現在の5%以下から、これを2015年には8%、2020年には15%まで高めていく計画です。今回はそれに従った内容であり、年初にも商務省が省エネ関連の刺激策を検討していると伝えられていましたのでサプライズではありません。しかし、それにしてもようやく具体的な政策を発表してきたという印象です
ただ、今回の刺激策は規模が小さく、一部の家電銘柄の上昇があったにすぎませんでした。やはり、中国株が本格的に上昇するには「金融緩和と財政出動の時期がいつになるか」だと思います。2011年末で2008年末に発表された4兆元の大規模経済対策の資金は使いきりました。つまり今は端境期であり苦しい時期なのですが、胡錦涛政権では、もう公共投資はやらない可能性が強いでしょう。欧州も米国も選挙の時期であり、しかも欧州の問題によって状況は大きく変化します。
それらの結果によって状況は大きく変わってしまうから、その状況を見届ける必要があるからです。ちなみに5月18日に中国国家情報センター経済予測は第2四半期のGDP成長率が第1四半期から引き続き減速し7.5%前後の成長率になるとの見通しを発表しています。このような比較的低い成長予想を出してくるところをみると、やはり直近で刺激策が出る可能性は低いと思います。大きなインフラ投資の実施は秋の習近平政権へ移行後になる可能性が高いと思われます。しかし、現在、香港市場は大きく下落していますが、インフラ投資が発表されれば急激に業績が回復する見込みの会社までもが暴落しているような状況です。そういった銘柄をじっくり拾っていくには、現在続いている調整は良いタイミングだと思います。