トルコリラの下落が止まりません。リラ安の主因がトルコのエルドアン大統領であることから、当面反発の見込みはないと考えられます。通貨安は物価高につながるためトルコ国民はインフレ高進に苦しんでいますが、その防衛策としてトルコリラ以外の通貨、資産に換える動きを強めています。

トルコの高インフレと金融政策

トルコの11月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年比で21.31%。10月から3.51%も上昇しています。トルコ中央銀行は12月16日の政策決定会合で、主要政策金利の1週間物レポ金利を1%下げ、年14%に引き下げました。4会合連続で利下げを実施しています。

インフレを抑制するためにはトルコリラの価値の毀損を阻止せねばならないのですが、度重なる利下げによってトルコリラの価値は今年、2021年だけで50%あまり下落、つまり価値が半分になってしまっています。インフレ率が20%を超えているにも関わらずトルコの金利は14%ですので、トルコリラの価値の下落が止まらない状況にあります。

エルドアン大統領の新経済モデル

エルドアン大統領は、金利を低く抑える金融緩和政策がトルコの輸出を押し上げ、新たな融資を促し、雇用を生み、経済成長に寄与するとして、利下げを支持しています。

しかし、日本と同じくトルコも原油などのエネルギー資源は輸入に頼っているため、過度な通貨安は輸出競争力を上昇させると同時に高インフレをもたらす要因となります。

エルドアン大統領はこの物価上昇は強欲と輸入物価によるもので、在庫を積み上げる企業は重罪を犯していると反論。トルコの新経済モデルを信じてほしいと国民に訴えており、インフレを抑制するための利上げに否定的です。

焼け石に水のトルコ中央銀行によるトルコリラ買い介入

トルコ中央銀行は12月10日に今月3回目の米ドル売り・トルコリラ買い介入を実施していますが、効果は一時的に終わりトレーダーらの絶好の売り場を提供するだけとなっています。

エルドアン大統領は介入によって「このような通貨への攻撃(リラ安)を覆すことができると信じている」と発言すると同時に「トルコ中銀による先週の市場介入にもかかわらずトルコの外貨準備は問題ではない」と述べています。エルドアン大統領がわざわざアナウンスメントするほどに市場の関心を集めているのが「外貨準備」です。

トルコ外貨準備急減

トルコの度重なる米ドル売り・トルコリラ買い介入によってトルコの外貨準備は11月26日から12月3日で20.2億ドル減少しています。

ゴールドマンサックスは「トルコの外貨準備高が気になる速度で減少している」と警告しています。トルコが利上げに踏み切ることなく、介入で通貨防衛が成功できるとして介入を続けるとするならば、資金を捻出するためにトルコが保有する他の資産を売却するリスクも出てきます。これは2018年の新興国通貨安時(リラ安)のコラムでも解説しているところとなります。

そして、トルコ中央銀行は今年、2021年9月にも外貨準備として保有するゴールド約21トンを売却したことが明らかとなっています。

トルコリラ急反騰のテールリスクとは

エルドアン大統領が強権を振るううちはリラ安が続くと考えられますが、気になるのはエルドアン大統領の体調不良説です。

11月にはエルドアン大統領の体調不良説などをSNSで拡散した容疑で数十人が逮捕されるなど、トルコ治安部隊も神経を尖らせています。2023年に予定されている選挙が早められる可能性も指摘され始めています。テールリスクではありますが、エルドアン大統領の支配が途絶えた時、トルコリラが急反騰する可能性にも留意したいところです。