下落に転じた海運株

日本郵船(9101)は11月4日、22.3期通期の連結純利益予想を従来の5,000億円から7,100億円(前期比5.1倍)に、期末配当予想を500円から600円(前期末は180円)に上方修正しました。

純利益の市場コンセンサスが6,056億円だったため、好感されても良かったはずですが、配当の増額幅が小さかったことが、発表直後に売られた要因と言われています。

週明けの8日は、相場全体が軟調の中、ボラティリティを選好した買いもあって反発しましたが、8月や9月の上昇相場のような連騰期待は薄れているようです。

9日はソフトバンクグループ(9984)が発表した上限1兆円規模の自社株買いが好感され、人気が同社株に集中した点なども、海運株が相対的に見送られた要因と言えるでしょう。

これだけ上方修正が続くと、いくら割安でも、材料に新鮮味がなくなって来ます。人気が続かないと、出来高も継続的に増加しなくなるため、まもなく需給悪になってしまいます。まさに海運株はそういった状況になりつつあります。

短期、中長期それぞれの視点で見る海運株の株価動向

これまではコンテナ市況の高騰による、定期船事業における持分法適用会社OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)の業績が想定を上回って推移していることが主要因だったわけですが、もはやこれだけでは株価は上がりません。主体的な材料で上昇するには、これまでとは違った材料が必要になってきます。

当面、海運株の株価動向を見る上では、相場全体の日々の相対的な優劣を考えないと、短期売買が難しくなっていく局面です。まずは、全体の決算発表が一巡する、来週あたりに再動意のタイミングが到来するかどうか、短期的には注視する必要がありそうです。

一方、中長期的には見方が変わります。海運3社の株価は月足ローソク足で見ると、9月にかなり強烈な上ヒゲ高値を形成しました。日本郵船の場合、過去に大相場があった1989年や2007年でも、ここまで明確な天井感を示唆する局面はありませんでした。

ただ、この上ヒゲ高値を上抜ければ、1989年12月高値12,500円、2007年7月高値12,760円を目指すこともあり得るでしょう。低いバリュエーション面だけで見ると、9月の高値(11,300円)更新は時間の問題と言えなくもない水準だからです。

ただ、そのような単純なストーリーはないでしょう。今からでも戻れば早く売りたい、と思っている買い方は低いバリュエーションだけを担保に持ち続けることができるでしょうか。


※こちらのコラムは、2021年11月9日午前11時に執筆しています。