米金利はどこまで上昇する?

米ドル高・円安が急拡大し、今週は一時112円を上回る動きとなった。この動きは、基本的には日米金利差米ドル優位拡大に沿ったものだが、ただ米ドル/円の上昇が早いことから、徐々に金利差から見て米ドル「上がり過ぎ」の懸念も出てきた(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円と日米金利差その1 (2021年7月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これは、金融政策を反映する2年債利回り差と比較するとより顕著だ。最近の米ドル/円と日米2年債利回り差の関係を前提にすると、金利差が示す米ドル/円の水準はせいぜい111円程度といったところではないか(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米金利差その2 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

では、先行した米ドル/円の上昇を、今後日米金利差、とくにその主役である米金利上昇が追随することで正当化する可能性はあるだろうか。たとえば、米10年債利回りで考えた場合は、その可能性はあるのかもしれない。

米10年債利回りは今週に入り1.5%を上回る動きとなったが、それでも90日MA(移動平均線)からのかい離率はプラス10%程度なので、とくに「上がり過ぎ」懸念が強いわけではない(図表3参照)。

【図表3】米10年債利回りの90日MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

一方で、金融政策を反映する米2年債利回りの90日MAからのかい離率は、すでにプラス40%以上に拡大してきた(図表4参照)。これは、経験的にはかなり「上がり過ぎ」懸念が強くなっている可能性を示している。

【図表4】米2年債利回りの90日MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

なみに、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)の後の米2年債利回り急騰局面では、同かい離率はプラス60%以上に拡大した。仮に、今回も同かい離率がプラス60%以上に拡大するなら、米2年債利回りは0.33%程度まで上昇する計算になる。ただ、そんなふうに考えても、今週に入り一時0.3%以上に上昇した米2年債利回りは、目先的にはすでにさらなる上昇余地が限られそうな水準にあるということになるのだろう。

最近にかけての米ドル/円の急騰は、それまで長く続いた小動きの反動といったテクニカルな理由も大きいだろう。そんなふうに勢い付いた相場は、えてして「理屈抜き」の動きになることも珍しくない。

ただ「熱狂」が一段落した時に手掛かりとして求められるのは、金利差などによる裏付けだ。米ドル高・円安が、そんな金利差から短期的なかい離が目立ち始めたことは、少し意識する必要があるのではないか。