先週夏休みをいただき、友人の勧めで観始めた「愛の不時着」(NETFLIX配信)にハマりました。背景にある南北朝鮮の対立が涙をそそります。
そのような呑気な話ではなく、足元ではアフガニスタンと米国の対立が危険水域です。今後戦闘が激化しても、市場への影響は短期的には限定的となるでしょうが、中長期的には別の面で注目されます。
タリバン政権の課題の一つが資金源です。タリバンの年間収入は、海外からの支援、麻薬や資源等の輸出に課税所得等、最大でも15億ドル(約1650億円)程度とされます(国連監視機関)。国際支援を受けているアフガニスタン軍の5000億円規模を大きく下回ります。
しかも、外部資金の流入は厳しさを増しています。IMFの特別引出権(SDR)利用も凍結されましたし、殆どが米国に保管されている海外資産の還流は難しいでしょう。日米を含む西側諸国の大半の銀行で、タリバン宛の送金は原則受け付けてもらえません。かつては、こうした経済制裁対象国の資金源とされていた暗号資産も、近年では取引所の顧客管理が厳しくなったため、活用は難しくなっています。
頼みの綱は国内資源の友好国向け輸出でしょう。アフガニスタンには推定1兆ドル(110兆円)を超えるレアアースの鉱床があり、特に電気自動車用などで需要急騰のリチウム埋蔵量は世界最大とされます。採掘にメドは立ちませんが、今回の政権交代を機に、距離的にも近い中国の協力が囁かれています。共産党機関紙の人民日報系メディアは、連日のように、米国批判とタリバン政権との協力の余地について発信しています。
先週のカブール空港のテロや、これに続き発表された米国によるドローン攻撃に見られる通り、現地の戦闘は簡単には収束しそうにありません。これに伴い、タリバンの資金ニーズも増し、状況次第で中国が資源採掘等で協力を開始するかもしれません。経済規模からすればごく小規模なアフガニスタンですが、にわかに脚光を浴びつつある資源大国でもあります。場合によっては、中国の新たなエネルギー覇権の一翼を担うことになる可能性もあるだけに、アフガン問題は金融面からも注目しておく必要があると思われます。