中国の規制対象業種への締め付け
8月前半の中国株は反発となっています。7月30日終値から8月13日終値まで騰落率は上海総合指数が+3.5%、香港ハンセン指数が+1.7%となっています。
中国株が反発した理由はいくつかあります。まず、中国証券監督管理委員会(CSRC)が7月末に主要投資銀行などに、現在行われている教育業界への管理強化を他の業界に拡げる意向は無いと説明するなど、中国当局の規制が他の業界に広がるのではないかとの懸念に対して火消し対応をしていることがあります。
さらに、上海総合指数を見ると8月2日に大きく上昇しています。これは、中国政府が2021年下半期の経済政策指針を発表したことから、自動車、インフラ、資材など政策期待銘柄が買われたことが要因となっています。
ただし、火消しをする一方で、IT業界への規制強化は続いており、予断を許しません。規制強化の範囲は保険や動画、さらには医療データまでにも広がっており、関連のIT銘柄の株価は軟調に推移しています。さらにはオンラインゲーム産業への優遇税制を見直して、通常企業と同一の税率にする案も浮上している様子です。
IT業界以外にも、中国政府はビジネスにおける飲酒文化打破を求めたり、タバコや医薬品業界などに向けて独占禁止法の強化方針を打ち出したりするなど、他の業界に向けての規制強化の姿勢も打ち出しています。
このように中国株の主要株価指数のチャートを見ると、全体としては7月末に一旦の底を打ったようなチャートになっているのですが、規制対象業種への締め付けはまだまだ続いております。また、これが何処まで続くのか、まだ予想出来ない状況ですから、中国株全体が力強い上昇トレンドに移行するには少し時間がかかりそうです。
中国株は何度も急落急騰を繰り返している
ここまでに書いてきたように、目先の株価推移は重たい値動きがもうしばらく続きそうです。しかし過去にも中国に対するリスク・懸念で相場が大きく下げたことは何度もありました。
現在の下落局面前の株価推移がどうだったのかを見てみると、2021年1月~2月は香港の売買代金が連日過去最大級となって、香港H株指数は2020年秋に9,000ポイント台だったところから12,000ポイントを超えるまで急騰していました。
さらに振り返ってみると、2015年初めも、金融緩和を背景に大きな出来高をつけて株価は急騰し、当時中国株はミニバブルと呼ばれ、信用取引金額は過去最大級に膨れ上がりました。その後、信用取引の規制などが入って2015年夏に大暴落し、いわゆるチャイナショックが発生して、リスク回避が鮮明となりました。
そして、一旦8,000ポイントを割り込んだH株指数ですが、2018年初めにも出来高を急拡大させて13,000を超えるまで急騰しました。しかし米中貿易戦争が始まるとリスク回避で長らく低迷し、再び10,000ポイント割れとなり、新型コロナウィルスの感染拡大で一段と下げた後、世界的な金融緩和や景気刺激策、株高を背景に2021年初めの大幅高で持ち直しました。
過去の急落(リスク回避)局面を見てみると、いずれも大幅安の前にリスクを取る動きが高まって、大きな出来高を付けて割高水準にまで買い進まれ、その反動から何らかの理由で大きく下げるというパターンでした。今回は政治リスクが株価を下げる原因となっていますが、前述の通り、大きく下がったところでは投資家心理に考慮した報道も出ており、やや反発しています。
2015年のバブル崩壊時も、中国政府は株価の買い支え策に懸命になっていました。香港だけで東証と同規模の時価総額があり、中国本土の上海と深センにも巨大な株式市場があり、これらを保有している中国国民に対する配慮はあるはずです。
今回の政策リスク不安もどこかで和らぎ、底打ちする時が来るものと思われます。中国当局は全てのIT企業を経営悪化させるような目的はないはずで、多くのIT企業は再び当局の意向に沿った形で成長を進めると思います。
あとは相場の底打ちタイミングですが、政策リスクはすぐに消えそうになく、いつがそのタイミングなのか予想するのも難しい状況です。それでも、株価が上昇トレンドに戻る様子を伺いながら買い場を検討していきたいところです。