米ドル/円と米金利
先週の米ドル/円は、一時110円台後半まで上昇しましたが、週末には109円台半ばまで反落しました。この米ドル/円の値動きは、これまでと同様に日米金利差とほぼ重なったものでした(図表1参照)。その意味では、先週の米ドル/円の動きは、日米金利差、とくにその主役である米金利に連れた面が大きかったでしょう。
米金利、たとえば米10年債利回りは、一時は1.4%に迫るまで上昇しましたが、週末にはミシガン大消費者信頼感指数という米景気指標が予想を大きく下回ったことをきっかけに急低下、1.3%割れとなりました(図表2参照)。
夏期休暇のピークで、市場参加者が少なく薄商いになっていたことが金利、為替相場ともに値動きを大きくした可能性はあるでしょうが、この間の関係を元に考えれば、米ドル/円の場合は、米金利がさらに下がるかがまず注目されるところになりそうです。
その米金利、米10年債利回りについて、90日MA(移動平均線)との関係を見ると、先週末1.3%割れとなったことで、かい離率はマイナス10%以上に再拡大となりました(図表3、4参照)。これは、経験的には「下がり過ぎ」懸念の強い状況が続いていることを示しています。
米国では、今月初めに発表された7月雇用統計が事前予想を上回る改善となったことに加え、先週発表された主な物価統計も、たとえば変動の大きい食料及びエネルギーを除いた7月CPI(消費者物価指数)コア指数が前年比で4%以上といった高い伸びが続くなど、景気とインフレ懸念の両面から、現行の金融緩和を見直す可能性が高まっているようです(図表5参照)。
そういった中では、米金利の「下がり過ぎ」がさらに拡大する可能性は、基本的には低く、むしろ「下がり過ぎ」の修正で米金利は上昇するリスクの方が相対的には高いのではないでしょうか。そんな米金利に米ドル/円が連れるといった関係がこの先も続くなら、米ドル/円も下落リスクは限られ、大きく動くなら上昇方向といった見通しが基本になるのではないでしょうか。
連続利上げのメキシコ
先週はメキシコが利上げを決定しました。前回、6月の金融政策会合に続き、2回連続の利上げとなりましたが、普通、金利を上げると通貨、メキシコペソも上がりそうですが、先週は利上げ決定の後、むしろメキシコペソは上げ渋り、小反落となりました(図表6参照)。
これについては、今回の利上げはすでに織り込まれていた上に、利上げの決定が賛成3、反対2といった具合に予想以上に僅差だったからといった解説が基本のようです。ただ、利上げの決定がペソ高に織り込まれたことの反動が入ったという点については微妙ではないでしょうか。
たとえば、「利上げを織り込んだペソ高の反動」とは、短期的な「上がり過ぎ」の反動と近い意味のようにも感じますが、メシキコペソ/円の90日MAからのかい離率は、利上げ決定前でもプラス1%程度に過ぎませんでした(図表7参照)。経験的に、同かい離率がプラス5%前後になると、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなるようですが、その意味では利上げ前はとくに「上がり過ぎ」ではなかったようです。
足元のメキシコペソ/円において懸念されるのは、短期的な「上がり過ぎ」より、中長期的な「上がり過ぎ」懸念でしょう。メシキコペソなど新興国通貨は、経験的に長期の移動平均線、5年MAが上限となる傾向がありました。その意味では、5年MA前後は、メキシコペソも含む新興国通貨の中長期的な「上がり過ぎ」警戒域といえそうですが、足元のメキシコペソ/円はまさにそんな5年MA近辺での推移となっているのです(図表8参照)。
メキシコは6月に「サプライズ利上げ」を行いましたが、その後もメキシコペソは上げ渋る展開となりました。そして連続利上げとなった今回も、メキシコペソは小反落といった具合に、これまでのところ「利上げ=通貨高」となっていません。これは、すでに中長期的な高値警戒域に達していることから、一般的に上昇要因とされる材料への反応も鈍くなっているということではないでしょうか。