CPIコアを2年前比で見る
今週の注目の1つが、米国のCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といったインフレ指標の発表だった。この2つの指標は、事前予想との比較で見ると、例えば米CPIコア指数(CPIから生鮮食品を除いたもの)の前年比で見た場合、前者は予想を下回ったものの、後者は予想以上といった具合にマチマチの結果だった。では、米国のインフレ懸念についての評価はどのようになるだろうか。
この間の1つのテーマは、最近の物価上昇の主因は、「コロナ・ショック」直後に物価が大きく落ち込んだ反動、つまり「一時的なインフレ懸念に過ぎない」といったことだった。ではこれについて、米CPIコア指数について確認してみよう。
米CPIコア指数の前年比上昇率は、直近で4%以上となっている(図表1参照)。ここ数年間で見ると抜きん出た数字となったのは、上述のように「コロナ・ショック」後の反動と言われると、そうなのかもしれない。
そこで、物価が大きく変化した「コロナ・ショック」要因を除外するべく、前年ではなく、2年前との比較についても調べてみた。すると、米CPIコア指数の対2年前比の上昇率は、6%近くに急上昇していた(図表2参照)。こんなふうに見ると、最近の米国の物価上昇は、「コロナ・ショック」の反動だけではなさそうだ。
ちなみに、2年間での物価上昇率が6%近いということは、単純に一年換算すると3%近いということになる。要するに、FRB(米連邦準備制度理事会)のインフレ目標である2%を大きく上回っているわけだ。
以上のように見ると、パウエルFRB議長などが繰り返してきた「インフレ懸念は一時的」といった評価は苦しくなってきたのではないか。そしてこれは、最近FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーが相次ぎ現行の金融緩和見直しに言及していることの背景である可能性がある。「物価の番人」である米金融当局では、物価上昇への懸念から金融緩和見直しを急ぐ必要を感じ始めているということではないか。