米ドルのトレンドは対円とそれ以外では違う!?

対円での米ドルは、1月に記録した102円を最近も大きく上回る水準での推移となっている。ただ、対円以外、たとえば対ユーロ、豪ドルなどでは米ドルは年初来の安値にかなり近いところまで戻ってきた。

ちなみに、ユーロ/米ドルのユーロ高値・米ドル安値は、1月に記録した1.23米ドル台半ば、そして豪ドル/米ドルの豪ドル高値・米ドル安値は2月に記録した0.8米ドル台だが、先週末の米雇用統計の「ネガティブ・サプライズ」を受けて米ドル急落となると、一気にそれぞれの米ドル安値まで1%程度といったところまで接近してきた(図表1、2参照)。

【図表1】ユーロ/米ドルと独米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】豪ドル/米ドルと豪米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

 

ちなみに、これを米ドル/円にたとえるなら、104円台まで米ドル安・円高に戻ったといった感じだろう。それは、年初来安値更新も射程に入った、明らかな「米ドル安復活」の印象を抱かせるものではないか。つまり、対ユーロや豪ドルでは、まさにそんな「米ドル安復活」の様相となっているようだ。

そのような「米ドル安復活」のきっかけは、米金利急騰の一服だろう。ユーロ/米ドルも豪ドル/米ドルも、米ドル高の反転は、3月末・4月初めの米金利が頭打ちとなり金利差米ドル優位拡大が一巡したタイミングだった。その後米金利が低下傾向となる中で、上述のように、対円以外では一気に「米ドル安復活」に向かうところとなった。

それにしても、このようにあっさり「米ドル安復活」の様相となったのは、そもそもトレンドとしては米ドル安が続いている影響があったのではないか。ユーロ/米ドルも豪ドル/米ドルも、一時米金利急騰に連れる形で反落が拡大したものの、それは52週MA(移動平均線)までにとどまった(図表3、4参照)。経験的には、そんな値動きはユーロ安、豪ドル安、米ドル高が一時的で、トレンドとしては米ドル安が続いている可能性を示している。

【図表3】ユーロ/米ドルと52週MA (2000年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】豪ドル/米ドルと52週MA (2005年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

 

米ドル/円の場合は、米金利急騰に連れた米ドル急騰で、52週MAを大きく上回り、米ドル高トレンドへの転換の可能性が高くなったが、それとユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルでは事情が異なるようだ。

以上のように見ると、対ユーロ、豪ドルでは、米ドル安トレンド継続中の可能性があるようだ。その上で、足元の米ドルの方向に影響の大きい米金利がまだ低下傾向が続くなら、対ユーロ、豪ドルでは米ドル安値更新の可能性もあるのかもしれない。