2020年度もあと2週間程度で終わりです。少し早いかもしれませんが、2020年度の業種別騰落ランキングを考察してみました。

【図表1】業種別騰落ランキング(2020/3/31-2021/3/12)
出所:QUICK Astra ManagerよりDZHフィナンシャルリサーチ作成

図表1は先週末(3月12日)時点のものです。騰落率上位は1位から、「海運」、「鉄鋼」、「電気機器」、「非鉄金属」、「金属製品」と続きます。

新型コロナウイルスの影響で急速に落ち込んだ世界景気は、主要国の金融緩和・大規模な財政政策などを背景に想定以上に立ち直りが早く、市況関連株の上昇の追い風になりました。「電気機器」や「機械」、「サービス」、「情報・通信」といったITハイテクグロース株も強いパフォーマンスとなっています。

一方、騰落率下位は「電気・ガス」、「食料品」や「医薬品」といった一般的にはディフェンシブといわれる業種です。コロナ禍で業況が一気に悪化し、現在でも需要回復の見通しが立たない鉄道を含む「陸運」や「空運」なども上位に顔を出す格好になりました。

図表2で、先週(3月5日~12日)1週間の騰落順位をみると、「海運」や「鉄鋼」は相変わらず強いモメンタムが続いていますが、「電気・ガス」、「医薬品」や「建設」など、この1年間で上昇率が小さかった業種の上昇が相対的に目立ちました。

「NYダウ平均株価が連日で史上最高値更新、日経平均株価も再び3万円を超えるのか、超えるなら日本株に買いを入れたい、しかし高値掴みはしたくない」。そのような積極的にリスクを取りたくない出遅れ業種への買いや、特にFOMC(連邦公開市場委員会)などを前にリバランスが意識された可能性があります。

【図表2】業種別騰落ランキング(2021/3/5-3/12)
出所:QUICK Astra ManagerよりDZHフィナンシャルリサーチ作成

ただ、先週1週間を通じても相対的にさえなかったのは「食料品」、「陸運」、「空運」や「水産・農林」です。そこで、今回は「食料品」に注目することにしました。

一般的に「食料品」の特徴は、好況期にはパフォーマンスが相対的に低くなるのですが、2012年12月を起点とする景気回復局面の中、2015年にかけての上昇率の高さが目立ちました。当時は、TPP(環太平洋パートナーシップ)にかかわる関税撤廃の恩恵銘柄として「食料品」の一角が買われました。

そんな当時の慣れない好環境だった反動が足元まで引きずっているのでしょうか。ましてや、エムスリーやレーザーテックなどグロースモメンタム株が盛隆を強める、ある意味ブームとなる中、蚊帳の外に置かれていたのが「食料品」なのです。

出遅れ感の目立つ食料品株に関して、ここからどのような材料が背景としてついてくるでしょうか? 仮に長い調整が終わっていたとしたら、材料は株価を押し上げる要因になるであろうと思われます。