英国で3年ぶりの大型IPOが注目を集めています。デリバルー(Deliveroo)という宅配会社で、時価総額は70億ドル、約7500億円とされます。しかし注目は規模だけではありません。宅配の注文客にも株式を配分すると発表したのです。

先週の発表によれば、配分額は一人約15万円まで、合計75億円分の株式としています。また、配達員にも最大150万円相当の株式を与え、働きに報いるとしています。

このように、上場時に顧客等の広い層に株式を配るのは、契約者の相互組織である生命保険会社を除き、あまり例がありません。昨年12月に上場した民泊のエアービーは数少ない前例で、コロナ影響への補償も兼ねて宿泊施設オーナーに合計250億円相当の株式を配布しました。が、今回のデリバルーは、更に進めて、一般ユーザーや外部委託者にも株式を配布します。

こうした“企業は、多くのステークホルダーに支えられて成長するもの”、という考え方は、ESGのS=社会との共生という概念に通じるものです。ESGは、日本でも政府の“E”=環境目標の設定を背景に急速に広まっています。ところが、欧州などESG先進国の焦点は、”E“から”S“へシフトしつつあります。新型コロナで健康な働き方が問われたことや、各地の暴動等で人権意識が高まっていることなどが関係しているようです。今後、海外のIPOでは、”S“への配慮で、広いステークホルダーに分配するものが増えるかもしれません。

マネックス証券でも、最近「だれかのためは自分のため」という共生のコンセプトで、「#ため活」という活動を始めています。明日儲かる株ももちろん重要ですが、社会を考える投資を組み入れた、新たな形の分散投資も提案できればと思っています。