先週、ベトナムのマクロ経済の成長と対外開放政策について、書きましたが、忘れてはならないのは、この国が、まだまだ若いということです。ベトナム戦争の終結は、1975年です。戦争により、国土は荒廃し、他のASEAN諸国に比べ開発に出遅れる結果となりましたが、戦争終結後には、第二次大戦後の日本と同様に、ベビーブームが起こりました。

その結果、ベトナムの人口ピラミッドは、現在釣鐘型で、労働人口が相対的に多く、平均年齢も30歳弱となっています。ホーチミン市やハノイ市などの大都市圏では、一人当たりGDPは2012年に3,500米ドルを超えて来ており、共働き世帯では、農村地域の世帯の5倍以上の可処分所得があるとも言われています。こうして拡大している中間層は、やはり30代以下の世代であり、消費をリードすることが予想されます。実際、これまでとは大きな変化が見られ、白物家電や車・バイクなどの消費から、女性ではファッションやコスメ、男性もIT製品やファッション・嗜好品などにと、消費の質に変化が見られます。

一方で、小売業は、まだまだ零細個人商店が多いために、供給側が追いついていないという側面もあります。ただ、例えば、街の市場に代わり生鮮品やIT製品に特化してスーパーマーケットを展開するチェーンストアが台頭したり、あるジュエリーの小売業者はこの5年で二桁成長を遂げたり、ベトナム全土で独自のリテール店舗を構えるまでになるなど、消費の多様化・効率化の要請の中、小売業にも変化が見られます。また、30代以下の世代では、67%が「ネットで買い物をしたことがある」と回答※した調査結果もあり、オンラインでの消費は、ベトナム人消費者に根付き始めています。品目では、ファッション、台所用品、化粧品、IT製品などの購入を中心に、拡大を続けています。

オンラインでの消費は、都市部の居住者によって引っ張られた消費を、地方や農村部に拡大することにも繋がっています。ベトナムの都市化率は、他のASEAN諸国に比べても、まだ低く、ベトナムの消費額の過半はまだ、地方や農村部に居住する人たちが支えています。オンラインでの消費は、そうした人たちに消費する機会を提供することとなり、消費の拡大ペースが早まることが期待されています。

筆者は、ホーチミンで現地企業の担当者の鼻息の荒いプレゼンを聞いていて、政府の規制緩和政策や対外開放政策による工業化という面からのみならず、消費の面からも、ベトナムの成長は次の段階に入って来ていると感じました。

※「VECITA (Vietnam E Commerce and Information Technology Agency)」統計より抜粋

コラム執筆:Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank (NWB)
世界三大金融市場の一つである香港にて、個人投資家に、「世界水準の資産運用商品」と「日本水準のサービス品質」、個人向け資産運用プラットフォームとしての「安心感」を併せて提供している金融機関。マネックスグループ出資先