英ポンド高の理由と「行き過ぎ」の点検

「合意なき離脱」回避後、英ポンドの上昇が続いている。年明け1月には140円程度でスタートしたが、先週は一時148円を超えるなど、一気に150円の大台に迫る動きとなっている(図表1参照)。

【図表1】英ポンド/円と日英金利差(2020年12月~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

ところで、このような英ポンドの上昇は、ほぼ日英金利差英ポンド優位の拡大に沿った動きだった。では、この金利差英ポンド優位拡大に伴う英ポンド高・円安はこの先も続くだろうか。

ただ、この数ヶ月こそ、英ポンド/円と金利差は高い相関関係が続いているが、もう少し長い期間を対象にしてみると、印象が全く変わってくる。いわゆる「Brexit(英国のEU離脱)ショック」が起こった2016年当時の英ポンド/円と金利差の関係を前提にすると、最近にかけての金利差英ポンド優位の拡大を受けてもなお、金利差が示す英ポンド/円の水準は125円程度なので、この140円を大きく上回る英ポンド高・円安は、大幅な行き過ぎの可能性がある(図表2参照)。

【図表2】英ポンド/円と日英金利差 (2016年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

次に英ポンド/円の90日MA(移動平均線)からのかい離率を見てみよう。最近にかけての一本調子の上昇を受けて、同かい離率はプラス5%以上に拡大してきた(図表3参照)。過去の経験を参考にすると、同かい離率のプラス方向への拡大は5~10%で一巡するのが基本だった。その意味では、徐々に短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなってきた可能性がありそうだ。

【図表3】英ポンド/円の90日MAからのかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

ちなみに、足元の90日MAは140円なので、それを5~10%上回る水準は単純計算なら147~154円。以上を参考にすると、目先的に英ポンド/円が150円を超えてくると、短期的な「上がり過ぎ」懸念が一段と強まることから、150円以上の水準に長くとどまる可能性は低いのではないか。

もう1つ、英ポンドのポジションについても見てみよう。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の英ポンド・ポジションは、足元で買い越しが2万枚を超えてきた(図表4参照)。同買い越しは、これまで4万枚以上に拡大したこともあったので、その意味ではこれだけで「買われ過ぎ」懸念が強いということにはならないだろう。

【図表4】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション (2010年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

ただ、ここからさらに買い越しが拡大すると、経験的には「買われ過ぎ」警戒度が高まる。そしてすでに見てきたように、90日MAとの関係などを参考にすると、短期的な「上がり過ぎ」警戒度も高まりそうだ。英ポンド/円が、当面150円を超えるということは、そういった意味がありそうだ。