新型コロナウイルスの新規感染者数に大騒ぎするのは一部メディアに限られ、多くの日本人は経済とウイルスとのバランスを冷静に考え、行動するようになってきたように感じています。

新型コロナウイルスについては、まだわからないことが多く、これからも油断できない状況です。そのなかではっきりしていることは、コロナ禍によって各国の財政状態がさらに悪化したということです。

コロナ禍で膨らむ財政赤字

国の財政支出は、感染対策のための費用や、経済の落ち込みを支えるための政府の補助金などによって大きく拡大しました。その一方で、経済活動の低迷により、税収は大きく減少することが予想されます。

日本ではコロナ対策の補正予算が組まれ、その結果、2020年度の新規国債発行額は90.2兆円となりました。一般会計歳出額のうち国債を財源としている比率(公債依存度)は56.3%まで上昇し、国の歳出額の半分以上を国債に依存する状態になりました。

IMF(国際通貨基金)の推計によると、2019年の公的債務の対GDP比が100%を上回っているのは、G7各国の中で日本以外では、アメリカとイタリアだけです。中でも日本が237.7%と断トツに高くなっています。

2020年度の国債発行残高は、ついに1000兆円を突破することになり、これによって比率はさらに高まり、250%を超える水準まで上昇する見込みです。

高まるインフレリスク

国債の発行が増えれば、需給関係から長期金利が上昇するはずですが、低金利が続いているのには、理由があります。大量に発行される国債を中央銀行である日銀が最終的に購入しているからです。

政府の財政赤字の拡大と共に、日銀のバランスシートも大きく膨らんでいます。日銀は国債だけではなく、ETFやREITも購入しており、マーケットの変動によっては大きな損失を出すリスクが高まりかねません。

日銀の財務内容が悪化し、信認が低下すれば、日銀が発行する日銀券にもマイナスの影響が出てきます。通貨価値が下落する、すなわち「インフレになるリスクが高まる」と考えるのが自然です。

インフレに備える必要性

毎年9月1日は防災の日として、関東大震災の教訓を踏まえた防災訓練が行われています。地震や火災は、いつどのくらいの規模でやってくるか予想がつきません。そのため、例え可能性が低くても、最悪の事態を想定し準備をしておくのが正しい危機管理の方法です。

これはインフレに関しても同じではないでしょうか?いつどのくらいのインフレになるかは誰にもわかりません。しかし、現状の日本の財政赤字はインフレーションでしか解決できないような状況になってきていると思われます。

地震が起きてから防災訓練をしても手遅れであるように、インフレが起きてからインフレ対策をとっても間に合いません。であれば、今のうちにインフレに備えるための「インフレ訓練」をしておく必要があるのではないでしょうか。

「インフレ訓練」の具体的な方法については、次回お伝えしたいと思います。