クロス円下落の理由とは?

米ドル全面安傾向が続く中で、今週に入り、対米ドルでの外貨の取引、「ドルストレート」は高値圏での推移が続く一方で、対円での外貨の取引、「クロス円」は下落リスクの拡大が目立ってきた。いうまでもなく、先週後半から米ドル安・円高が広がってきたためだ。

この数ヶ月、「ドルストレート」、「クロス円」とも上昇傾向が続いてきた。それは、米ドル安傾向の中でも、米ドル/円がほとんど横ばいとなっていた影響が大きいだろう。では、米ドル/円が下落を続けるなら、クロス円の下落(円高)リスクはどう考えたら良いかについて、今回は豪ドルのケースで考えてみる。

まずは、金利差との関係を見ると、これまでの豪ドル/円の上昇は、金利差ではほとんど説明できない(図表1参照)。3月の「コロナ・ショック」を前後して、日豪金利差はほとんど変化ないにもかかわらず豪ドル/円は大きく上昇したのである。

【図表1】豪ドル/円と日豪金利差 (2019年7月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

この点は、豪ドル/米ドルではかなり違う。米豪金利差の米ドル優位は、「コロナ・ショック」を前後し大きく縮小した(図表2参照)。それは、最近にかけての豪ドル高・米ドル安と方向的には一致するといえるだろう。

【図表2】豪ドル/米ドルと米豪金利差(2019年7月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

金利差との関係からすると、1豪ドル=0.7米ドルを超えている動きはおかしくなく、もっと豪ドル高でもいいくらいだが、他方一時1豪ドル=77円近くまでの豪ドル高はとても説明できず、本来ならせいぜい70円程度の可能性すらあった

このような、金利差からすると過大の可能性のある対円での豪ドル高をもたらした一因は、全体的な米ドル安傾向の中で、米ドル/円は横ばいとなったことだろう。以上からすると、米ドル/円が横ばいから下落(米ドル安・円高)となる中で、対円での豪ドル下落リスクが拡大するのは当然といえるだろう。

問題は仮に米ドル/円の下落が続いた場合、豪ドル/円はどこまで下がるのかということ。金利差で正当化できる水準に回帰するなら1豪ドル=70円前後まで下がるのだろうか。

豪ドル/円は、この間の上昇局面の中で52週MA(移動平均線)を大きく上回ってきた(図表3参照)。経験的には、このような動きは一時的ではなく、上昇トレンドが展開している可能性が高いといえる。

そんな上昇トレンドと逆行する一時的な下落は、経験的には52週MA前後までがせいぜい。足元の52週MAは72円台半ば。以上をまとめると、米ドル/円の下落がまだ続き、豪ドル/円が反落した場合でも72円半ば前後までといった見通しになる。

【図表3】豪ドル/円と52週MA (2008年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成