「村上ファンド」が一躍有名になった東京スタイル事件

村上世彰氏が名を馳せたのは2002年の東京スタイルに対する株主提案でした。東京スタイルはアパレルメーカーの大手で「ナノ・ユニバース」、「ステューシー」などの人気ブランドを有していました。それらアパレル事業から得られる収益を蓄積し、現金・有価証券を多数保有していました。村上氏はその保有資産を売却などし、株主に還元すべきだと主張したのです。

村上氏はその東京スタイルへの株主提案の前には繊維業を発祥とする昭栄に対し公開買付を実施していました。昭栄もかつての収益を元に不動産投資を進めており、優良不動産を多数保有していたのです。東京スタイルへの株主提案、昭栄への公開買付はいずれも失敗しましたが、村上氏と同氏が運用するいわゆる「村上ファンド」は著名になりました。

その後、東京スタイルは同業のサンエー・インターナショナルと合併しTSIホールディングス(3608)となっています。昭栄は不動産大手のヒューリック(3003)が買収し、名実ともに不動産会社となりました。両社とも単独での生き残りは難しかったものの、いずれもその価値が評価されて合併等に至っており、村上氏の見立ては正しかったと言えるように思います。

ターゲットになりやすい企業の類似点

これらの会社は本業が低迷する一方、過去の収益で一定の資産を有しており、その資産を活かしきれていなかった会社と見られます。アクティビストのターゲットになる会社はそういう会社が多く、有名なニッポン放送の事例は本業がラジオ放送で、フジテレビ株式が資産だったと言えるでしょう。そうした事例の代表的なものが三陽商会(8011)です。

三陽商会はかつてバーバリーブランドをてがけたアパレル業界の名門企業でした。バーバリーブランドを失う2015年までは年間1,000億円以上の売上をあげており、リーマンショックの影響を受けた2009年以外は営業黒字が続いていました。しかし、バーバリーブランドを失ってからというもの、5期連続で減収、2016年12月期以降は営業赤字を継続しています。バーバリーブランドを有した2015年12月期末に650億円あった純資産は直近本決算で390億円まで目減りしています。まさに本業が低迷している代表的な会社と言えるでしょう。

アクティビストが投資する三陽商会の新たな動き

一方、三陽商会はいまだに100億円近い投資有価証券や本社のある四谷や銀座に不動産を保有しています。過去には青山や江東区潮見にも自社ビルを保有していたものの、それらはすでに売却しており優良資産の切り売りを進めているように映ります。この三陽商会に今、いくつものアクティビストが投資をしていることが分かっています。RMBキャピタルや、ひびき・パース・アドバイザーズなどが同社株に投資しています。

7月17日に同社は銀座に所有する不動産を約130億円で売却したことを発表しました。同社の経営について上記のファンドはどう考えで、それに対して同社はどのように考えているのでしょうか。そのあたりを次回、詳しく見ていきましょう。