2020年3月決算会社の株主総会では、株主側の動きが目立ちます。株主提案が提出された会社の数は過去最大だったようです。特にアクティビストとされるような株主からの提案が大きく増えています。アクティビストの存在感は確実に増してきていると言えます。

株主総会で経営陣の交代を訴えたコロワイドと大戸屋のような注目を集めるケースもあり、アクティビズムの動きに対する一般的な認知が高まっていると言えるのではないでしょうか。(なお、コロワイドと大戸屋は株主総会でコロワイド側の提案が否決された後、コロワイドが大戸屋の公開買付を開始しています。この公開買付については改めて内容を見てみたいと思います)

一般的な認知を計る上で参考になるのが、テレビドラマや小説、漫画などの作品での取り上げられ方や、描かれ方だと思います。「半沢直樹」は銀行のビジネスイメージを、「ハゲタカ」は旧来のアクティビストのイメージを形成したといってもいいように思います。その中で、最近アクティビストを取り上げる作品として注目しているのが漫画雑誌「モーニング」に連載されている「相談役 島耕作」です。

「島耕作」シリーズは1983年に「課長 島耕作」として連載を開始し、サラリーマンを主役にした漫画です。課長として家電メーカーに勤めていた主人公が部長、取締役、常務、専務と作品内で出世を重ね、最後は社長になります。その中で、会社員としての生き様、社内政治、恋愛模様が描かれており、日本のサラリーマン社会を描いた漫画として代表的な作品です。

「島耕作」は40年に渡ってサラリーマン社会や日本経済社会の一般的な理解を描画し、また形成してきた漫画であると言えるでしょう。その島耕作氏は社長を務めた後、会長として財界活動を行い、今は相談役として大所高所から経営を見ています。現在でも転生ものに出たり、騎士団長を務めたりするなど活躍しています。「マスク 島耕作」で検索すると、最近の相談役としての島耕作氏の近影をご確認いただけます。

その「島耕作」シリーズは、日本企業の変化を見られることも魅力の一つです。課長・部長時代から海外展開や多角化、外国企業の買収、中国の成長、国内企業の再編、震災など様々なテーマで描かれています。その「島耕作」の直近の連載で、取締役会改革が描かれているのです。

島耕作の勤め先(もともと初芝電産という社名でしたが、現在はテコットになっています)の取締役会は基本的に同社の経営陣が中心、委員会設置会社で外部取締役が中心、という昨今評価されるような取締役会とは異なる旧来型のものでした。

42歳と若くして新社長となった風花社長はその取締役会を改革し、外部取締役を中心としようと試みます。しかし、現在の取締役会はそれを否決。風花社長は相談役の島耕作と組んで、株主総会で外部取締役中心の経営陣とすべく、改革に向けて動いています。アクティビスト活動に例えると、社長や旧経営者が改革側という変則的な形ですが、現在の主要取締役が会社側、島相談役・風花社長を株主側と見立てられるように思います。直近の号では両陣営の議決権争奪戦が描かれています。

このように、取締役会改革というテーマが島耕作に取り上げられていることに、世の中の大きな変化を感じます。また、本作品で基本的に絶対善として描かれる島耕作が会社側ではなく、株主側についているのも時代の変化を感じます。

本シリーズでは過去にもグループ会社などが買収の標的となることがありました。その際、島耕作は基本的に会社側を代表しており、株主側は敵扱いでした。もちろん、島耕作のポジションも影響しているとは思いますが、現在でもテコットがアクティビストの挑戦を受け、島耕作が会社側と連携して防戦する・・・といった逆のストーリーもあり得たように思います。

しかし、今の島耕作は株主側(改革派)として描かれています。これは、従来のアクティビストではない、「アクティビスト2.0」と言えるような株主は、会社や社会に価値を与えるものだという理解が広まりつつあることの表れのように思います。