3月以降の株価は何に反応してきたか?

「コロナ・ショック」とされ、3月に世界的な大暴落となった株価だが、最近にかけてかなり反発してきた。たとえば米国の代表的な株価指数であるNYダウなどは、おおむね下げ幅の半値戻しとなった。

このような株価の動きを比較的うまく説明できそうなのは、新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者数(または死者数)だ。たとえば、米国の1日あたりの新規感染者数は、3月から激増し、一気に3万人を突破した。ただ、3月末以降、3万人台で増加も頭打ちとなり、最近にかけて一時1万人台まで減少した。

このような数字の推移は、3月に入ってから大暴落となった株価が、3月末以降反発に転じ、最近にかけて下げ幅の半値戻しとなっていることと方向は逆だが似ている(逆相関)。では、両者に因果関係はあるか。

感染者数(または死者数)が増加すると、新型コロナウイルス感染対策が強化される。感染対策は、基本的に経済対策と真逆の関係だ。その意味では、感染者数が増加すると、経済的にマイナスの影響となる感染対策強化を織り込む形で株価は下がり、そして感染者数が減ると感染対策の緩和(経済的にはプラス要因)を織り込む形で株価は反発したと考えると、辻褄は合わなくない。

そもそも、3月以降の経済政策は、新型コロナウイルス政策がほぼ全てといえるだろう。そう考えると、新型コロナウイルス政策の重要な目安が感染者数であり、それが経済政策への影響を通じて株価に一定の相関関係があるのもおかしな話ではないのではないか。

以上からすると、「新型コロナウイルス政策が経済政策のほとんど」といった状況がこの先変わるまでは、株価の行方は1日あたりの新型コロナウイルス感染者数(または死者数)が手掛かりになるかもしれない。わかりやすくするつもりで言うなら、コロナ相場の先行きの手掛かり、「影のインディケーター」は、1日あたりの感染者数(または死者数)かもしれない。

さて、世界の株価に影響の大きい米国の株価にとっては、以上の前提からすると米国の感染者数が目安になる。一時3万人を大きく上回った1日あたりの感染者数が、最近にかけて1万人台まで減少したが、さらに1万人を割り込んで一段と減少に向かうなら、米国の株価は感染対策緩和を織り込みさらに上昇に向かう可能性がある。

その一方で気になるのは、ブラジルなど南半球では感染者の増加が加速し、世界全体の感染者数は4月のピークを上回り始めたということ。世界的に、人の移動を制限してはいるものの、世界全体の感染者増加が続く中で、米国の感染者の減少がこのまま続くだろうか。

感染者が経済政策への影響を通じ、株価にとっても「影のインディケーター」なら、世界的な感染者が、この間の最高を更新してきた動きは気になるところではないか。為替は、そんな株価の動きに注目したい。