雇用統計後の為替を考える
先週の米ドル/円は106円台中心にじりじりと下落、一時106円をわずかに割れる場面もあったものの、注目の米雇用統計発表後は106円台後半へ買い戻される展開となりました(図表1参照)。
それにしても、雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が2050万人の減少、そして失業率は一気に14.7%へ急上昇といった具合に、事前に予想されていたものの、記録的な悪化となりました。しかし、この日のNYダウは400ドル以上の大幅高、そして上述のように米ドルも円に対しては買い戻される結果となりました(図表2参照)。
これは、今回の場合、あくまで新型コロナウイルス感染を防ぐための外出規制などに伴う一時的解雇の割合が高く、恒久的解雇の割合は限られるため、経済活動の再開に伴い雇用は回復するといった期待を反映している面が大きいのではないでしょうか。
要するに、NFPマイナス2000万人、失業率14%も、あくまで「一時的」な数字に過ぎないとして、それに単純に反応するような展開にはなっていないようです。では、このような株高、米ドル高・円安の動きはこの先も続くのか?
ここまでの株価反発は、基本的には「下がり過ぎ」の反動ということでしょう。NYダウの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、一時マイナス30%以上に拡大、あのリーマン・ショック以上の「下がり過ぎ」となりました(図表3参照)。そのかい離率は、足元ではマイナス5%程度まで縮小しました。
では、すでに「コロナ・ショック」の株価暴落は終わり、株価は底を打ったのか。経験的には見ると、それはまだ微妙ではないでしょうか。たとえば、今回を除いて、2000年以降のNYダウの90日MAからのマイナスかい離率のピークは2001年9月、2008年11月などでしたが、株価の底打ちは、2002年10月、2009年3月といった具合で、4~13ヶ月後でした。
株価が短期的に「下がり過ぎ」を拡大するのは、下落トレンドが展開しているため、下落方向へ勢い余る結果ということではないでしょうか。下落トレンドが展開しているなら、それが2月から3月にかけてのたった1ヶ月余りで早々に終わったということは、果たしてあるのか。
さて、株安トレンドが続いており、この反発はあくまで「下がり過ぎ」反動に伴う一時的なものということなら、経験的には52週MA前後までがせいぜいとなります。ちなみに、NYダウの52週MAは、足元で2万6500ドル程度(図表4参照)。
以上見てきたように、株反発はあくまで一時的であり、この先3月に記録した安値更新へ向かう可能性があるのか、それとも過去の似たケースとは異なり、今回はすでに株安は終わっており、さらなる反発に向かうのか。小動きが終わった後の為替の方向性は、そんな株の動きが手掛かりになるのではないでしょうか。