代表的なFX相場急変「リーマン・ショック」を例に考える

「コロナ・パニック」といった状況が広がる中で、世界的な株大暴落が続き、為替相場も長く続いた小動き、「低いボラティリティー(変動率)=低ボラ」から、一転してボラティリティーが急騰するようになりました。そこで今回は、このようなFX取引における相場急変時の基本的な心構えについて確認してみたいと思います。

結論的にいうと、心構えの第1はレバレッジを通常より低めにしてリスク許容度を低くするということでしょう。

そして第2は、通貨によってボラティリティーは異なるので、相対的にボラティリティーの高い高金利、新興国通貨は基本的には避けて、相対的にボラが低く、流動性の高い米ドルに代表される主要国通貨の取引ウエイトを高めるということでしょう。

第3として、損切り(ストップロス)を入れて損失を限定的にとどめるということはありますが、これは通貨のボラティリティーなどによって考え方がわかれる可能性もあるでしょう。

心構えその1=レバレッジを下げる

「相場急変時の心構え」を考える上で、FXの歴史の中で実際に相場が急変したケースでどんなことがあったかを確認してみましょう。FX取引が始まったのは1998年ですが、それから10年後の2008年に為替相場はボラティリティーの急騰に直面しました。リーマン・ショックと呼ばれた局面です(図表1参照)。

特に2008年10月の米ドル/円のボラティリティー(高値-安値/終値)は15%に急騰しました。それまで、米ドル/円の月間ボラティリティーは5%前後が基本だったところから一気に3倍にもボラ急騰となったのです。

【図表1】米ドル/円の週足チャート(2008年1月~2009年5月)
出所:マネックストレーダーFX

金融庁は2010年に、レバレッジの上限を25倍とすることを決めましたが、その直接的なきっかけは、まさにリーマン・ショックを受けた為替相場のボラ急騰でした。

為替相場は、株式相場などと比べても基本的にボラが低いため、レバレッジにより資金効率を高くする商品設計となっていましたが、前提条件である「低ボラ」のレベルが変わると、それはレバレッジ規制の強化を必要とさせることになったわけです。

心構えその2=相対的にボラの低い主要国通貨にシフトする

ところで、ここでもう1つ注目されたのが、通貨別レバレッジの導入でした。レバレッジの前提条件の1つがボラティリティーですが、そのボラは通貨によって異なりました。

たとえば、上述の2008年10月、米ドル/円のボラは15%に急騰しましたが、豪ドル/円のそれは45%といった具合にはるかに上回ったのです。ボラが違う通貨に対して、レバレッジ基準が一律というのは、普通に考えたら矛盾しています。

結果的にこの通貨別レバレッジ導入は未だ実現していませんが、ボラ急騰、言い換えれば相場急変時には、しっかり意識する必要のあることでしょう。上述の2008年10月の豪ドル/円のケースは極端ですが、基本的に米ドル/円より、クロス円(米ドル以外の外貨と円の取引)の方がボラは高く、さらに為替取引では基本的にリスク資産と位置付けられる高金利通貨、新興国通貨のボラはもっと高いというのが通常です。

以上を踏まえると、ボラ急騰局面では、通常よりも相対的にボラが低く、流動性の豊富な米ドル/円など主要国の通貨ペアの取引ウエイトを高めるのが基本でしょう。

心構えその3=損切りの有効活用

最後に損切りについて。損切り(ストップロス)は、損失を最小限に食い止めるという意味では有効な考え方です。ただ個人投資家の為替取引、FXの場合は原則的には取引期間が無制限なので、この実質的な「期間内損失」という考え方は該当しないケースもあります。

特に米ドル/円などの場合、長期的に100~120円のレンジ中心での往来が続きました(図表2参照)。かりに120円で買った米ドルが100円まで下がっても、何年か待つと120円近くまで戻る可能性があったわけですから、取引期間が実質的に無制限な個人投資家の場合なら損切りしないといった考え方もありうるのではないでしょうか。

【図表2】米ドル/円の月足チャート(2014年~)
出所:マネックストレーダーFX

他方、高金利通貨の場合は考え方が異なる可能性があります。高金利は、基本的には国内のインフレ(物価高)を反映していることが多く、インフレ、モノの価値が高くなることは、相対的に通貨価値の低下を意味します。要するに、インフレ通貨である高金利通貨は、中長期的に通貨価値が低下に向かう可能性が高いものです。

この結果、高金利通貨は、上述の米ドル/円などとは異なり、長期的にレンジが右肩下がりで展開するのが普通です(図表3参照)。その意味では、高いところで買った高金利通貨が下がると、その後の反発でも買った元の水準まで戻らない可能性はあるわけです。

【図表3】トルコリラ/円の月足チャート(2014年~)
出所:マネックストレーダーFX

以上からすると、高金利通貨を買う場合は米ドル/円以上に、割高局面では慎重に、割安局面を選ぶ必要があるでしょう。そのような投資判断を誤り、割高局面で投資し、相場急変に巻き込まれた場合は、そもそも相対的にボラティリティーが高く、そして中長期的に通貨価値が低下する可能性の高い高金利通貨だけに、損失を最小限に食い止める損切りが必要になるのではないでしょうか。