新型コロナウイルスによる肺炎感染拡大の影響で、確定申告の期限が4月16日に変更されました。所得税は1カ月、消費税は半月の延長となります。

「今なら確定申告の医療費控除は2本建て、お得な方を選ぼう」の回でご紹介したように、会社員は基本的には申告不要ですが、申告した方がお得になるケースも多々あります。

そこで今回は、税金の軽減効果が大きい2つの控除の申告についてお話しします。勤務先によっては在宅勤務を推奨するところもあり、該当される方は、浮いた通勤時間の分で申告手続きをされてはいかがでしょうか。

自然災害や火事、盗難などの被害額は控除できる

2019年に千葉県を襲った台風15号と19号、さらに「令和元年10月25日の記録的豪雨」は記憶に新しいところです。台風19号は、福島県や宮城県、神奈川県、長野県などでも甚大な被害をもたらしました。
本コラムをお読みの方の中にも、ご自身や親戚、友人・知人などが被災した方がいらっしゃるのではないでしょうか。

こうした自然災害や火事などで自宅の建物や家財が損害を受けた方や、盗難や横領(詐欺を除く)の被害に遭った方は、確定申告をすれば、「雑損控除」という控除が受けられます

控除が適用されるのは日常生活に必要な資産で、事業用の資産や30万円を超える貴金属などの贅沢品は対象外です。一方、取り壊しや原状復帰のための費用は含めることができます。

所得から控除される額は、「(損害額+災害関連支出-損害保険などによる補てん金)-総所得金額×10%」と「災害関連支出-5万円」のいずれか多い方となっています。申告には建物や家財の損害額の証明書や災害関連支出の領収書、盗難の場合は警察の被害届出証明書などが必要になります。

損害額が数百万円、数千万円に及ぶ方の場合、2019年の所得から控除し切れなければ最長3年間に渡り、繰り越して控除を受けることもできます。管轄の税務署に相談してみてください。

寄附金控除は「税額控除」が適用できるケースも

2019年にこうした被災地支援や公益団体の活動支援などで国や地方公共団体、特定の社会福祉法人・学校法人などに寄附をした方も、申告すれば税金を軽減することができます

「寄附金控除」と言って、「寄附金額」か「総所得金額×40%」の少ない方から2,000円を引いた額が所得から控除されるのです(お受験や新入学のシーズンですが、私立学校の入学時に払い込んだ寄附金は残念ながら原則、対象外です)。

これらの寄附は後述するふるさと納税と同じ「特定寄附金」扱いとなっており、2019年に両方の寄附をしている場合、所得税の控除額は合算して寄附金控除として計算します。

ただし、この中で政党や政治資金団体などの政治活動に対する寄附金や、認定特定非営利活動(NPO)法人・公益社団法人への寄附金については、税額控除が選択できる可能性があります(税額控除を選んだ場合、ふるさと納税の寄附金と合算することはできません)。

税額控除だと控除額が税金の額から直接差し引かれるため、多くの場合、税金を計算する前の所得から差し引く所得控除よりも節税効果が大きくなります。税額控除が可能となる認定NPO法人・公益社団法人については、内閣府のウェブサイトで調べることができます。

申告の際には、寄附金などの受領書、政治献金であれば選挙管理委員会の確認印のある「寄附金(税額)控除のための書類」を添付または提示することが求められます。特定の公益法人や学校法人への寄附などの場合は、控除を受けられる法人である証明書や認定証の写しも必要です。

なお、一般のNPO法人、一般財団法人、一般社団法人、宗教法人などへの寄附では、寄附金控除は受けられません。寄附金控除の適用の可否を確認するなら、寄附先に直接問い合わせるのが手っ取り早いでしょう。

ワンストップ特例の手続き後に確定申告する方は要注意

2019年にふるさと納税をした方も、控除を受けるためには申告をする必要があります。会社員で年間の寄附先が5件以下など一定条件を満たせば、申告不要となる「ワンストップ特例」の制度が利用でき、こちらを利用する方は既に寄附先の自治体に申請書を送付しているはずです。

気を付けたいのは、ワンストップ特例の手続きを済ませた後に医療費控除や雑損控除、株式の損益通算、繰り越し控除など他の申告を行うと、ワンストップ特例の申請が自動的に無効にされてしまうこと。ですから、他の申告を行う場合は必ず同時にふるさと納税の分も申告して、「気が付いたら控除が受けられていなかった」などということのないようにしましょう

中には、「そんなことは知らずに申告しちゃったよ」という方もいるかもしれません。純粋な寄附として割り切れるなら話は別ですが、4月16日までに改めて申告書を作成して修正申告をすることも可能です。