今年も確定申告の受け付けがスタートしました。といっても、会社員だと「自分には関係ない」と思っている方が多いのではないでしょうか。
会社員は勤務先で年末調整をしてもらえますから、原則、申告は不要です(給与収入が2,000万円を超えていたり、2ヶ所以上から給与を受け取ったりしている方などは別ですが)。
しかし、一般的な会社員でも、実は申告した方が“納め過ぎた税金が戻ってきてお得”になることが少なくないのです。
代表的なものが、「医療費控除」の申告です。
本コラムでも何度かお話ししている基礎控除や配偶者控除・配偶者特別控除、社会保険料控除、生命保険料控除などは勤務先の年末調整時に適用されますが、医療費控除は自分で確定申告をしないと受けられません。
といっても、以前に医療費控除の申告をしたことがあって、「面倒くさいからなぁ」と尻込みする方もいるかもしれません。
大丈夫、事前に手続きをしておけばスマートフォンでも申告できるなど、5~10年前から比べると申告の手続きは大幅に簡便化されています。
さらに、今はいわゆる「医療費控除」と期間限定の「セルフメディケーション税制」の2本建てになっていて、どちらか有利な方を選んで申告できるのです。
歯科や眼科の高額治療も医療費として申告できる
医療費控除の対象になるのは、2019年の1年間で支払った医療費の合計が10万円(総所得金額が200万円未満なら、その5%)を超えた人。超えた分(上限200万円)に所得税率をかけた金額が、還付金として指定した口座に払い戻されます。
ただし、健康保険の高額療養費や家族療養費、民間生命保険の入院給付金などを受け取っていたら、その分はあらかじめ医療費から差し引いておく必要があります。
10万円というと一見ハードルが高そうに思えますが、医療費には本人だけでなく家族の分も合算していいことになっています。別居していても「生計を一にする」家族ならOKですから、仕送りをしている別居の親や、下宿して大学や専門学校に通う子どもの医療費なども合わせて申告できるのです。
さらに、対象となる医療費は意外と広範囲に及びます。
申告可能な医療費には、「治療目的は○」で「予防や美容目的は×」という制約があります。つまり、病院での診療や入院にかかった費用は申告できますが、大人の歯科矯正やインフルエンザの予防接種、人間ドック(異常が発見され、治療を受けた場合を除く)の費用などは対象外です。
一方で、健康保険適用外の先進医療や不妊治療、歯科のインプラントやセラミック義歯、眼科のレーシック手術やオルソケラトロジーなどの高額治療も医療費として認められています。
医療費控除の場合、以前は医療費の領収書やレシートを全て添付する必要がありましたが、今は病院や薬局ごとに支払った医療費の明細書を提出すればOK。会社員の方なら、健康保険から配布される「医療費のお知らせ」でも代用できるという手軽さです。
市販薬の利用が多い人にはセルフメディケーション税制が!
この医療費控除に加えて、2年前からはセルフメディケーション税制も導入されています。こちらは、特定市販薬(スイッチOTC医薬品)の購入金額が1年間で1万2000円を超えていたら、超えた分(上限8万8000円)が所得から控除されるというもの。
OTCとは「Over The Counter」の略で、医師の処方箋がなくてもドラッグストアのカウンター越しに購入できる医薬品を指します。このうち、医療用医薬品にも使用される86成分を含む約1,800アイテムが対象となっており、具体的な薬品名は厚生労働省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp)で確認することができます。
これらの医薬品を購入した際のレシートには、識別可能なマークが付いています。
セルフメディケーション税制も明細書を提出すればレシートの添付は不要ですが、税務署から提示を求められる可能性もあるので、レシートは廃棄せず保管しておきましょう。
セルフメディケーション税制の適用を受けるには、各種健診や予防接種など一定の“予防の取り組み”をしていることが必要になります。会社員の場合は、勤務先の定期健康診断を受診していれば問題ありません。
さて、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用ができず、どちらか一方を選んで申告することになります。
一般に、医療費控除やセルフメディケーション税制の対象額が「10万円未満」であればセルフメディケーション税制、「18万8000円以上」であれば医療費控除の適用を受けるのが還付金の面からはお得になりますが、その間の「10万円以上18万8000円未満」のゾーンに入る場合はケースバイケースで、どちらがお得とは言い切れません。
このゾーンに入る方がどちらで申告すべきか迷ったときは、国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」に実際の数字を入力して、比較してみるのも手です(申告書作成を開始すると、入力項目が表示されます)。